研究課題/領域番号 |
20K07070
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
森本 達也 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (50390779)
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研究分担者 |
砂川 陽一 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (30466297)
宮崎 雄輔 静岡県立大学, 薬学部, 客員共同研究員 (40803466)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | p300 / 結合タンパク / 心不全 / ヒストンアセチルトランスフェラーゼ / 心臓リモデリング / 心臓線維化 |
研究実績の概要 |
心不全マウスと正常マウスの心臓からp300複合体を精製し、p300との結合が変化する蛋白の同定を行い、195個の新規p300結合タンパクを同定した。なかでも新規p300結合タンパク質1(BP1)の培養心線維芽細胞における役割を検討した。 まず、Sf-9細胞にて作成されたリコンビナント全長p300及びHAタグ付き BP1を用いてプルダウンアッセイを行った。その結果、BP1とp300の直接結合を確認した。次に内在性の結合を確認するため、SDラットの心臓からDignam法によりタンパク質を抽出後、抗BP1抗体にて免疫沈降後、ウエスタンブロット法を行ったところ、BP1はp300と結合していた。次に新生仔ラット初代培養心線維芽細胞を播種し、BP1をsiRNAにてノックダウンした後、心線維化を誘導するTGF-βで刺激した。TGF-β刺激で増加したコラーゲン合成の指標であるL-3H-proline取り込み量がBP1のノックダウンにより有意に減少した。次に、心線維化マーカーであるα-smooth muscle actin (αSMA) のタンパク質、mRNA量はともにTGF-β刺激で増加し、BP1のノックダウンにより減少した。さらに生体内でのBP1の役割を検討するため、BP1のノックアウトマウスを作成し、個体数を増やしている。 本研究の結果より、新規p300結合タンパク質であるBP1は心線維化反応を正に制御していることが示唆された。今後、BP1とp300の機能やヒストンアセチル化酵素活性との関連、心線維化反応への作用を詳細に解析することで、心線維化反応における核内転写調節機構の更なる解明、並びに、核内シグナル経路をターゲットとした新たな心不全治療薬の開発に繋がることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画が妥当であったため、実験は順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
心筋梗塞ラットや食塩感受性ダールラットを用いて、新規p300結合蛋白BP1の発現量やp300との結合の変化などを検討する。また、心不全の重症度、ステージ別による変化も検討する。 生体内でのBP1の心不全に対する役割を検討するために、BP1を心臓でノックアウトした遺伝子改変マウスを作成した。このBP1遺伝子改変マウスが心不全を発症するかどうかを検討する。さらにこのマウスに大動脈縮搾術を行い、心不全の発症、進展に対する役割を検討する。 また、BP1によるp300のメチル化修飾の有無を解明し、その修飾部位を同定する。さらにはその修飾部位を変異させたp300を作成し、HAT活性や肥大反応に対する役割を検討する。
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