研究課題
腫瘍組織における低酸素誘導転写因子(HIF)の恒常的な活性化は,がんの進展や転移を促進する。また、腫瘍内マクロファージ(Mφ)は、がん微小環境により腫瘍増殖や転移を促進する形質を付与される。その一方で、LPSやIFNγによるMφの活性化は腫瘍進展に対して抑制的作用を示す。申請者は,腫瘍移植モデル動物実験において,HIFシグナルを増強するHIF-PH阻害薬が、腫瘍内のMφ亜集団に直接作用することにより腫瘍増殖を抑制して生存期間を延長させることを見出した。本研究の目的は,PHD-HIFを基軸とした詳細な分子解析を通して、HIF-PH阻害薬により形質変換した腫瘍内Mφが抗腫瘍効果をもたらす機序を明らかにすることを第一目的とする。また、本研究の遂行は、現在の腫瘍免疫療法では難治性を示すがんに対して,自然免疫の活性化過程を標的とした新しい腫瘍免疫療法を創出する可能性を有しており、新規創薬研究分野にも繋がることが期待される。本研究では、PHD-HIFシグナルの活性化による腫瘍内Ly6CloMφの貪食作用の促進機序の解明を目指す。とくに貪食開始の引き金となる腫瘍細胞の認識機序には深く着目する。また、Mφを介する細胞障害性T細胞などの獲得免疫機能の賦活化に対する影響を検証する。今年度は,PHD-HIFシグナルの活性化により腫瘍内Ly6CloMφに誘導される貪食作用促進に寄与する候補分子としてHIF-induced Phagocytosis Factor (HiPAF)を同定し、更にその機能解析を進めた。その結果、HiPAF-1は、in vitroにおいて骨髄由来Mφ(BMDM)のビーズの貪食活性を促進した。またin vivo実験としてLewis肺癌細胞株を移植した担がんマウスモデルにリコンビナントのHiPAF-1を投与すると腫瘍増殖の抑制効果が見られた。
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