研究課題/領域番号 |
20K07076
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
平松 正行 名城大学, 薬学部, 教授 (10189863)
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研究分担者 |
衣斐 大祐 名城大学, 薬学部, 准教授 (40757514)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ベタイン(グリシンベタイン) / ベタイン/GABAトランスポーター / GAT2 / アミロイドβタンパク質 / アルツハイマー型認知症 / 神経保護作用 / Neuro2A細胞 |
研究実績の概要 |
アルツハイマー型認知症の脳内では、アミロイドβ(Aβ)タンパク質の蓄積が原因となる老人斑とタウタンパク質の異常リン酸化が原因となる神経原線維変化が認められる。我々は、Aβの活性フラグメントであるAβ(25-35)をマウスの脳室内に投与すると認知機能が障害されること、この障害はベタインの前処置により抑制されることを明らかにしている。さらに培養細胞を用いた研究では、Aβ(25-35)または、酸化ストレスを引き起こす過酸化水素水をマウス神経芽細胞腫Neuro2A細胞に処置すると細胞生存率が低下したが、ベタインを前処置しておくとそれら細胞生存率の低下が抑制された。そこで本研究では、ベタインのトランスポーターとして知られているGABAトランスポーター2(GAT2)の発現とベタインの取り込み量の関係を調べ、GAT2発現レベルと取り込まれたベタイン量の間に正の相関関係が認められること、Aβ(25-35)を脳室内に投与したマウスの海馬にFAM-ベタインを微量投与したところ、海馬のNeuN陽性神経細胞において蛍光シグナルが強く認められたことから、ベタインは、グリア細胞に存在すると言われているGAT2ではなく神経細胞に選択的に取り込まれ、神経保護効果を示すことを示唆した。 一方、糖鎖修飾の1つであるグリコシル化が、アルツハイマー病の病態に関連していることが示唆されていることから、今回GAT2のN-グリコシル化における細胞保護作用の関係を検討したところ、この糖鎖修飾も神経保護に重要な役割をしている可能性が示唆された。 以上の結果から、ベタインは、グリア細胞に存在すると言われているGAT2ではなく、神経細胞に選択的に取り込まれ、神経保護効果を示すことが示唆された。また、神経細胞におけるGAT2タンパク質の発現レベルが高いほど内因性ベタインの取り込み量が増え、神経保護効果を発揮する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度も新型コロナウイルス感染症の影響により、マウスに慢性的に薬物を処置するような実験が一部中止となる、実験担当者の十分な研究時間の確保ができなかったことなど、研究活動を満足に行えなかった。さらに物品の輸出入にも一部影響がみられ、海外からの試薬等の搬入が大幅に遅延するなど、実験遂行は厳しいときもあったが、幸いにも進捗は「やや遅れている」程度と考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、Aβ (25-35) 脳室内投与マウスまたは家族性AD関連遺伝子発現マウスの海馬にアデノ随伴ウィルス(AAV)を用いて、GAT2を過剰発現またはノックダウ ンした際の、認知機能障害および神経細胞死の変化を調べる。さらに、引き続き、GAT2の翻訳後修飾を調べるために、まずGAT2の糖鎖やリン酸化修飾を調べる。そのために、 翻訳後修飾を受けるアミノ酸を修飾の影響を受けないアミノ酸に置換した際のGAT2の神経保護効果の変化を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の関係で、実験を担当する研究者の研究時間が十分に取れなかったこともあり、初年度からの研究計画が順次、遅れてきていた。1年遅れにはなるが、実験計画に沿って、GAT2の生理学的役割について検討する。
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