研究課題
アルツハイマー型認知症(AD)患者の脳内では、アミロイドβ(Aβ)タンパク質の蓄積が原因となる老人斑の生成とタウタンパク質の異常なリン酸化が原因となる神経原線維変化が認められ、脳内の神経細胞が長期間かけて変性し、認知機能が障害される。我々はこれまでに、Aβの活性フラグメントであるAβ(25-35)をマウスの脳室内に投与すると、マウスの認知機能が障害されること、この障害はトリメチルグリシン(ベタイン)の前処置により抑制されることを明らかにしている。さらに、培養細胞を用いた研究では、Aβ(25-35)または酸化ストレスを引き起こす過酸化水素水をマウス神経芽細胞腫Neuro2A細胞に処置すると、生存細胞率が低下したが、ベタインを前処置しておくとこの生存細胞率の低下が抑制された。そこで本研究では、ベタインのトランスポーターとして知られているGABAトランスポーター2(GAT2)の発現とベタインの細胞内への取り込み量の関係を調べるために、アデノ随伴ウィルス(AAV)を利用し、海馬錐体細胞におけるGAT2タンパクの過剰発現またはノックダウン(KD)を行った。また、Neuro 2A細胞の糖鎖修飾がGAT2の機能に与える影響についても検討した。GAT2過剰発現またはノックダウンを施したAβ脳室内投与マウスおよび遺伝的にAβが蓄積しやすい3×Tgマウスの認知機能を行動薬理学的解析により調べた。これらの結果から、GAT2は、酸化ストレスなどを抑制するために発現が増加し、ベタインは、このトランスポーターを介して、神経細胞に選択的に取り込まれ、神経保護効果や認知機能障害の発症を抑制している可能性を示唆した。
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Naunyn-Schmiedeberg's Archives of Pharmacology
巻: - ページ: -
10.1007/s00210-023-02778-x
Pharmacology Biochemistry and Behavior
巻: 230 ページ: 173617~173617
10.1016/j.pbb.2023.173617