オーファンGタンパク共役型受容体GPR35は、消化管に高発現していることが知られているが、その生体における役割については不明な部分が多い。本研究の目的は、炎症性腸疾患とその合併症におけるGPR35の役割を解明し、GPR35を標的とした新たな創薬理論を提案することである。これまでの検討で、GPR35が大腸炎の病態において保護的に機能していることが明らかになっている。最終年度では、GPR35の腸上皮バリア機能および炎症応答の制御における役割について検討した。 腸上皮バリア機能の維持に関連する粘液分泌およびタイトジャンクション関連タンパク質発現について、野生型(WT)マウスとGPR35欠損(KO)マウスで比較検討した。アルシアンブルー・PAS陽性粘液量ならびにMUC2発現はいずれもWTマウスとGPR35KOマウスで差は認められなかった。タイトジャンクション関連タンパク質発現も同様に、WTマウスと比較してGPR35KOマウスにおいて低下は認められなかった。これらの結果は、GPR35は腸上皮バリア機能の制御には関与していないことを示唆している。 WTとGPR35KOマウスから採取した骨髄細胞をM-CSF存在下にマクロファージに分化させた条件下に検討を行った。GPR35が骨髄分化マクロファージに発現していることをmRNAレベルで確認した。また、骨髄分化マクロファージにLPSを処置したところ、TNF-αなどのサイトカイン発現の増大したが、これらの増大はWTマウスと比較してGPR35KOマウスではさらに増大した。一方、GPR35活性化作用を有するリゾホスファチジン酸の処置はLPS誘起サイトカイン発現を抑制したが、この抑制作用はGPR35KOマウスでは消失した。以上の結果より、GPR35はマクロファージにおける炎症応答に対して抑制的に機能していることが判明した。
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