研究課題/領域番号 |
20K07085
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
小野寺 理沙子 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 特任助教 (60720399)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 葉酸修飾シクロデキストリン / 葉酸レセプター / オートファジー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、がん治療のみならず再発・転移を抑制可能な新規抗がん剤の開発である。近年、がんの再発・転移の原因としてがん幹細胞仮説が提唱されており、がん治療後に残存したがん幹細胞に対する治療薬の開発が活発に行われている。しかしながら、既存の抗がん剤の多くは、がん細胞の高い増殖効果に着目した化合物であり、増殖速度が遅いがん幹細胞に対しては十分な治療効果を示さない。一方、シクロデキストリン (CyD) 誘導体であるメチル-β-CyD に、がん標的リガンドとして葉酸を修飾した葉酸修飾メチル-β-CyD (FA-M-β-CyD) は、既存の抗がん剤とは異なる細胞死誘導機構を有する。よって、FA-M-β-CyD が、がん細胞のみならず、がん幹細胞に対しても高い抗がん活性を示すか否かについて検討する。本年度は、婦人科がんの中で最も死亡率が高く、とりわけ、腹膜へ転移した腹膜播種は予後不良である卵巣がん細胞を用いて評価を行った。その結果、FA-M-β-CyD は、卵巣がん細胞において FA 未修飾の M-β-CyD と比較して優れた抗腫瘍活性を示すことが示唆された。次に、FA-M-β-CyD の抗腫瘍活性に及ぼす葉酸レセプター-α (FA-α) の影響を検討した。その結果、FA-M-β-CyD の抗腫瘍活性に FA-α を介した細胞内取り込みの関与が示唆された。さらに、FA-M-β-CyD は卵巣がん細胞においてオートファジーを誘導可能であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、がん細胞のみならずがん幹細胞を標的とした画期的な新規抗がん剤の開発を企図し、FA-M-β-CyD の有用性評価を行っている。本年度の結果からFA-M-β-CyD は、卵巣がん細胞に対して FR-α を介して細胞内に取り込まれ、抗腫瘍活性を示すことが示唆された。また、FA-M-β-CyD の細胞死誘導機構は、既存の抗がん剤とは異なる可能性が示唆されたことから、次年度以降計画している抗腫瘍活性評価および作用機序の解明、in vivo における抗腫瘍活性および安全性評価を遂行する上で十分な基礎的知見を得ている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、本年度の結果を踏まえ、卵巣がん細胞に加え種々の FR-α 発現がん細胞および正常細胞に対する FA-M-β-CyD の抗腫瘍活性を評価し、その細胞死誘導メカニズムを詳細に検討する。また、がん細胞から単離したがん幹細胞に対する FA-M-β-CyD の抗腫瘍活性を評価する。さらに、担がんマウスを用いて in vivo での FA-M-β-CyD の抗腫瘍効果および安全性評価を行う予定である。
|