研究実績の概要 |
Alport症候群は、腎糸球体基底膜を構成するⅣ型コラーゲン (COL4A3/COL4A4/COL4A5) の遺伝子変異が原因で起こる難治性の遺伝性腎疾患であるが、未だ根本的な治療法はない。初期病態から作用しうる根治療法薬の開発を目指すには、異常となった変異Ⅳ型コラーゲンタンパク質三量体 (α3/α4/α5(IV)) の細胞内輸送・分泌を促進する候補物質の探索が必須である。本研究では、独自に開発した変異Ⅳ型コラーゲン (G1244D α5(IV)) の三量体形成・細胞外分泌を発光にて検出可能なHigh Through put Screening(HTS) システムを活用し、熊本大学オリジナル天然物バンク (約10,000の微生物・植物エキス) のスクリーニングを行った。その結果、ヒットエキスの共通成分であった化合物Xおよびその類縁体化合物Yが、単独でも用量依存的に変異Ⅳ型コラーゲン三量体の細胞外への輸送・分泌を促進することが明らかとなった。興味深いことに、化合物XおよびYは、共通標的タンパク質Zのノックダウンで作用が消失したことから、変異Ⅳ型コラーゲン三量体分泌におけるタンパク質Zの重要性が示唆された。さらに、複数の変異Ⅳ型コラーゲン (変異α5(IV)) を用いた網羅的遺伝子標的解析の結果から、化合物XおよびYが作用しうる特定の遺伝子変異 (領域) の存在を突き止めることに成功した。最後に、in vivo試験を行うにあたって、既存のAlport病態モデルマウスはⅣ型コラーゲンを欠損させたものであり、三量体を評価できないという欠点があった。そのため本分野では、三量体を評価可能な新規のAlport病態モデルマウスを作成し検討を行った。その結果、化合物Xにより病態の改善が認められた。
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