研究課題/領域番号 |
20K07094
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
太田 紘也 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (40638988)
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研究分担者 |
喜多 紗斗美 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (10461500)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マクロファージ / M1/M2分極化 / NCLX / Ca2+ / ミトコンドリア |
研究実績の概要 |
マクロファージは骨髄由来の免疫細胞の一つであり、環境や刺激に応じて分極化し、特異的で多様な機能を発現することが知られている。INF-γなどにより誘導されるM1マクロファージは、炎症性サイトカインを放出して炎症を促進する。また、IL-4などにより誘導されるM2マクロファージは、抗炎症性サイトカインを放出し、炎症の抑制や炎症後の組織修復などに関与する。これらマクロファージの分極化の制御機構についてはこれまでにも多くの研究がなされているが、研究代表者はミトコンドリアCa動態変化とマクロファージの分極化制御および機能発現との関連性に着目して研究を行っている。 まず、ミトコンドリアからのCa排出を担うNa/Ca交換輸送体(NCLX)の阻害薬CGP-37157を用いて、骨髄由来マクロファージ(BMDM)のM1/M2マクロファージ分極化への影響について検討したが、NCLX活性を阻害することによってはM1/M2マクロファージ分極化の程度に変化は見られず、分極化には影響しなかった。現在、NCLXのミトコンドリア内膜への発現抑制による分極化への影響を見るために、siRNAや遺伝子改変マウスを用いた実験の準備をしている。また、NCLXがM1マクロファージの機能に関与するのかについて、M1マクロファージの貪食作用に対するCGP-37157の影響について検討している。さらに、M2マクロファージは抗炎症作用に加えて細胞増殖作用を有することが報告されているが、これらの作用に対するCGP-37157の作用についても検討しており、M2マクロファージの機能にNCLXが関与することを示す知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、M1/M2マクロファージへの分極化およびこれらの機能におけるNCLXの関与について、主にNCLX阻害薬を用いた検討を行った。NCLX活性は分極化の制御には直接関与しない可能性が考えられたが、NCLX発現抑制による影響を検討する準備をしている。また、M2マクロファージの機能にはNCLXが関与する可能性が考えられる知見を得ているが、今後、各種NCLX遺伝子改変マウスを用いてさらに検討を行う準備が整っており、おおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、主に各種NCLX遺伝子改変マウスおよびミトコンドリアへのCa流入を担うMCUの遺伝子改変マウスを用いた実験を行う。 1: 遺伝子改変マウス由来のマクロファージを用いた解析 NCLX遺伝子改変マウスおよびMCU遺伝子改変マウスから単離したマクロファージをM1/M2分極化させて、マクロファージのM1/M2分極化および機能発現にミトコンドリアCa輸送体が及ぼす影響について比較・検討する。また、マクロファージのミトコンドリアCa濃度の変化がミトコンドリア機能に及ぼす影響についても、遺伝子改変マウス由来のマクロファージの酸素消費速度などを解析することによって調べる。 2: 遺伝子改変マウスを用いた各種病態モデルの作製 マクロファージの分極化や機能発現におけるミトコンドリアCa濃度制御のin vivoでの役割について、NCLX/MCU遺伝子改変マウス(欠損および過剰発現の相互交配)を用いて検討する。M1/M2分極化や機能発現に変化が見られた組み合わせの遺伝子改変マウスを用いて、血管病モデル(下肢虚血モデルなど)、潰瘍性大腸炎モデル(デキストラン硫酸投与モデル)などを作製する。下肢虚血モデルでは、大腿動静脈結紮後の血流回復の程度および血管新生について比較する。潰瘍性大腸炎モデルは、血便などの消化器症状の観察や、大腸組織の病理学的な解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度も引き続き、コロナ禍のために学会参加がオンラインになり、旅費が発生しなかった。 令和4年度は、マクロファージの酸素消費量の測定などの実験を開始するため、試薬など消耗品の購入が増える予定である。また、ミトコンドリアCa輸送体の遺伝子改変動物を使った病態モデルマウスの作製などの実験を行うため、動物の繁殖維持に必要な出費も大幅に増加する。また、学会発表などの旅費も発生する予定である。
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