研究課題/領域番号 |
20K07096
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
平崎 能郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任准教授 (40436374)
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研究分担者 |
金田 篤志 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (10313024)
福世 真樹 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (40639085)
関 元昭 千葉大学, 医学部附属病院, 特任助教 (70714278)
岡部 篤史 千葉大学, 大学院医学研究院, 助教 (80778118)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 天然化合物 / エピゲノム / トランスクリプトーム / 白血病細胞株 / Cinobufagin / c-Myc / H3K27ac / Motif解析 |
研究実績の概要 |
すでに解析を進めているCinobufaginによる白血病細胞株に対する抑制効果に関して、詳細なる解析を行った。FAB分類M2に属する、HL60、Kasumi-1に対してCinobufagin処理を行い、RNA-seq DATAを用い、GSEA解析を行った結果、薬剤処理により発現が低下した遺伝子群に関してはMYC_TARGETS_V2とV1にトップヒットをみとめた。また上昇した遺伝子群はTNFA_SIGNALING_VIA_NFKB, APOPTOSIS, TGF_BETA_SIGNALINGという白血病細胞を細胞死に導くものであった。また、H3K27ac抗体によるChIP-seqで解析したところ上昇した遺伝子群のH3K27ac化レベルは薬剤処理により上昇をみとめた。薬剤処理によりH3K27ac化レベルが上昇したlocusにおいてde novo Motif解析を行ったところ、AP-1とRUNX1のMotifが有意であり、これらの転写因子の関与が示唆された。また、低下したc-Myc関連遺伝子群はH3K27ac化レベルの変化はみとめられなかった。これらc-Mycシグナルの抑制を解したアポトーシス誘導に関して、論文化を行った(1)。 Cinobufaginはジギタリスなどの強心ステロイドと同じくNa/K ATPaseを阻害することが知られているが、c-Mycの抑制を介した抗がん作用が認められた。このことは難治疾患である急性骨髄性白血病の治療に関して、新たな知見であると思われた。 1) Yoshiro Hirasaki et al, Cinobufagin inhibits proliferation of acute myeloid leukaemia cells by repressing c-Myc pathway-associated genes, CHEMICO-BIOLOGICAL INTERACTION, in press
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は細胞情報統合解析により和漢薬由来化合物の中から新たな抗腫瘍性機序をもつエピゲノム分子標的薬を検索し、安全で臨床応用がより現実的な癌治療戦略を構築することを目的とする。そこで、スクリーニングでえられた候補化合物を用いて、その抗癌機序にかんして詳細な解析をおこなっている。スクリーニングはまず生薬のスクリーニングを行い、候補の生薬を絞り込み、さらにその生薬に含まれる化合物に関してスクリーニングを行い、エピゲノムに作用する抗癌作用をもつ天然化合物を探索する。現時点では臨床経験の報告されている66種類の生薬のエタノール抽出成分を用いて、HL60およびKasumi-1に対する増殖抑制を検討した。結果として、約半数の生薬において、両者の細胞株に対して抑制効果が認められた。また概要で記載したようにすでに解析を進めているCinobufaginの抗がん機序に関して報告を行った。
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今後の研究の推進方策 |
ウェスタンブロッティングによるpan H3Acの増加を評価項目として薬剤の選択を行う。蛋白レベルでのH3Acが増加した生薬に対して、その構成化合物を入手し、WST-8を用いた白血病細胞株への抑制効果と、ウェスタンブロッティングによるH3Acの増加を同時にみとめる化合物の選定を行う。またヒトPBMCに対しても候補薬剤を処理して生細胞活性評価を行い、毒性を評価して除外項目とする。 候補薬物に対して、アポトーシスおよび細胞周期、分化誘導への影響などの詳細解析を行う予定である。薬物処理によるエピゲノムの変化を活性化指標(H3K4me3, H3K4me1, H3K27ac)に対するChIP-seqにより評価し、発現変動をRNA-seqにより確認し、薬物処理によりエピゲノムを介して転写が活性化した遺伝子を同定する。
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