研究課題/領域番号 |
20K07097
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉本 尚子 千葉大学, 大学院薬学研究院, 講師 (10415333)
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研究分担者 |
浅野 孝 岩手医科大学, 薬学部, 助教 (10552888)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 天然薬用資源 / 植物 / 生合成 / 遺伝子 / 含硫黄成分 |
研究実績の概要 |
システインスルホキシド誘導体(CSOs)はヒガンバナ科のネギ属やツルバギア属、ノウゼンカズラ科ニンニクカズラ属等の植物が生産する薬学的に重要な機能性含硫黄成分である。本研究では、これらの植物のディープ・トランスクリプトームデータを利用して、CSOsの生合成に関わる酵素遺伝子の候補を網羅的に同定し、in vitro、in vivo、in planta発現系を用いてそれら遺伝子がコードするタンパク質の機能を解析する。得られた知見は、合成生物学的な手法による含硫黄成分の生合成システムの合理的再構築と化学的多様性のエンジニアリングに応用する。令和3年度に行った研究内容は以下のとおりである。1.ネギ属植物およびそれらのカルスにおけるCSOsの含有量に影響する要因を解析した。その結果、植物ホルモンやエリシターの処理によりCSOsの含有量が変化すること、植物種やCSOs種類によって含有量の増加や低下に寄与する要因が異なることが明らかになった。これらの結果の一部をまとめた論文を執筆し、国際誌に投稿した。2.前項1の結果とネギ属植物のディープ・トランスクリプトームデータを利用して、CSOs生合成酵素遺伝子の候補を探索した。3.ツルバギア属植物Tulbaghia violaceaが発現するフラビン含有モノオキシゲナーゼが、ツルバギア属の主要なCSOsであるマラスミンの生合成の最終段階において、生合成中間体スルフィド化合物をS-酸化してスルホキシド化合物であるマラスミンに変換する酵素活性を持つことを明らかにした。結果をまとめた論文を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度に生じた新型コロナウイルス感染症の拡大に起因する研究の遅れを令和3年度に完全に取り戻すことはできなかった。このため、令和3年度における研究遂行は、研究計画時の想定より遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度に引き続き、CSOs生合成に影響を与える要因の詳細な解析を進めるとともに、その情報とディープ・トランスクリプトームデータを利用したCSOs生合成酵素遺伝子の候補の探索に応用する。候補遺伝子はコード領域のクローニングと異種発現系の構築を行い、その機能を解析する。また、候補遺伝子のin vivo機能解析を可能にするため、簡便で効率的な遺伝子組換え方法の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に引き続き令和3年度も新型コロナウイルス感染症の拡大のため、学会年会がオンサイト開催からオンライン開催に変更され、申請時に計画していた学会発表のための旅費がかからず、参加費が想定よりもかからなかった。また、試薬等を使用するウェット実験よりもトランスクリプトームデータの解析等のドライ実験を優先して進めた結果、試薬やプラスチック消耗品の新規購入を抑えられた。生じた未使用額は次年度使用額とし、次年度における物品費等として使用する。
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