研究実績の概要 |
システインスルホキシド誘導体(CSOs)はヒガンバナ科のネギ属やツルバギア属、ノウゼンカズラ科ニンニクカズラ属等の植物が生産する薬学的に重要な機能性含硫黄成分である。本研究では、これらの植物のディープ・トランスクリプトームデータや外的・内的刺激に応答したCSOs量の変動に関する知見を利用し、CSOsの生合成に関わる酵素遺伝子の候補を探索した。さらに、候補遺伝子の機能を異種発現系を用いて解析し、合成生物学的な手法による含硫黄成分の生合成系エンジニアリングの可能性を探った。本研究により得られた成果の概要は以下のとおりである。1.ネギ属植物およびそれらのカルスにおけるCSOsの含有量やCSOs分解酵素の活性を解析し、細胞の分化がCSOs含有量やCSOs分解酵素活性に与える影響を明らかにした[Yoshimoto et al., J. Nat. Med., 76, 803-810 (2022)]。2.外的刺激を与えたネギ属植物およびそれらのカルスのCSOs含有量を解析し、植物体内におけるCSOs生産制御に関する知見を得た。3.前項1および2の結果とネギ属植物のディープ・トランスクリプトームデータを利用してCSOs生合成酵素遺伝子の候補を探索した。候補遺伝子をクローニングし、異種発現系を用いた機能解析を行った。4.ツルバギア属植物Tulbaghia violaceaのディープ・トランスクリプトームデータを解析し、ツルバギア属の主要なCSOsであるマラスミンの生合成に関わると予想される酵素遺伝子を探索した。候補遺伝子のうちクレードIIIフラビン含有モノオキシゲナーゼ遺伝子であるTvMAS1がマラスミン生合成の最終段階においてS-酸化反応を担う酵素をコードすることを明らかにした[Wang et al., Plant Biotechnol., 39, 281-289 (2022)]。
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