研究課題/領域番号 |
20K07098
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
門脇 真 富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 名誉教授 (20305709)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患(IBD) / 再燃 / 粘膜修復 / IL-10 |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患(IBD)は寛解と再燃を繰り返す難治性の慢性炎症疾患であるが、再燃の病態生理学的機序は不明であり、再燃モデルも確立していない。最近、長期寛解維持には腸管粘膜の修復が重要であり、腸管粘膜の修復には、腸管マクロファージが産生するサイトカインIL-10が大きく寄与していることが報告されている。そこで、DNB解析によるIBDの未病・再燃前規定因子群の検出及びIBDの未病・再燃前規定因子群の生理学的及び病態生理学的役割の解明のため、再燃モデルを作製を検討し、腸管マクロファージのIL-10産生を亢進させることを見出したベルベリンの効果を検討した。IBD再燃モデルは、3%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)水溶液を5日間自由飲水させて大腸炎を誘発した後、9日間の回復期間をおき再び2%DSS水溶液を6日間自由飲水させることで作製した。ベルベリンは9日間の回復期間中のみ経口投与し、ベルベリンの投与終了時点の14日目と実験最終日の20日目に大腸の組織学的評価を行った。ベルベリンの投与終了時点では、溶媒投与群とベルベリン投与群の大腸炎症状に差は認められなかったが、ベルベリン投与によって大腸粘膜構造の破綻が有意に改善された。さらに、ベルベリン投与群では溶媒投与群に比べ、再燃期間における大腸炎症状の再発と実験最終日での大腸粘膜構造の破綻が有意に抑制された。さらに、ベルベリンの標的タンパク質を探索するため質量分析等を用いて検討し、Fatty acid synthase(FAS)を候補タンパク質として同定した。IBD再燃モデルを確立すると共に、腸管マクロファージでのFASの活性化を介したIL-10産生の亢進による腸管粘膜修復の促進と再燃抑制が示唆された。今後、DNB解析によるIBDの未病・再燃前規定因子群の効率的な検出とその生理学的及び病態生理学的役割の解明に資する研究成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の拡大により、共同研究打ち合わせの出張や学会出張などの自粛による他大学の研究者との共同研究の遂行に支障が生じ、さらに大学院生の研究活動の抑制により研究の遂行に支障が生じたが、一定の研究成果は得られた
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今後の研究の推進方策 |
他の大学も含め、コロナ禍での研究遂行への対応策も整備されつつあり、研究を遂行する上での課題は軽減されつつあるため、共同研究者との更なる研究の進展に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大により、学術大会や共同研究のための旅費を使用しなかった事、及び研究活動が制限され研究消耗品を予定よりも購入しなかった事により、次年度使用額が生じた
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