研究課題/領域番号 |
20K07099
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
野田 正文 広島大学, 医系科学研究科(薬), 特任准教授 (40457289)
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研究分担者 |
杉山 政則 広島大学, 医系科学研究科(薬), 共同研究講座教授 (30106801)
杉本 幸子 広島大学, 医系科学研究科(薬), 准教授 (60549012)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞外多糖体 / 抗アレルギー / 抗炎症 / 肝機能改善 / 腸内細菌叢 |
研究実績の概要 |
植物由来乳酸菌Lactobacillus paracasei IJH-SONE68は細胞外多糖体 (EPS) を産生する。本株の産生するEPSには、モデルマウスにおける炎症予防・改善作用と抗肥満作用が確認されており、本研究では、本EPSは広く「炎症」を制御できると考え、本株の変異体を構築することで、このEPSの構造と機能について解析することを目的とした。 変異導入剤処理によって得られた384株の変異体のうち、抗アレルギー活性と相関性を示すヒアルロニダーゼ阻害活性が上昇したものをスクリーニングによって選別したところ、阻害活性が最も上昇 (4倍) した変異体 (M411) の存在が確認できた。 M411変異株とIJH-SONE68親株の産生するEPSの生物活性について、モデルマウスを用いて比較を行った。その結果、M411変異株由来EPSは親株のものよりも優れた抗アレルギー活性と肝機能数値改善効果を示すことが確認された。この時、肝臓中の中性脂肪量についても大きな改善がみられ、非アルコール性脂肪肝と関連するALT値の低下とよく合致していた。 加えて、並行して実施していたIJH-SONE68株に関する臨床研究の結果から、本株EPSを含む発酵液の摂取によってASTおよびALTの数値が減少すること、そしてそれぞれ肝炎症状の良化および増悪と相関を示す、糞便中のAnaerostipes属およびVeillonella disparの存在比率が、共に症状改善の方向に変化することが合わせて確認された。 M411変異株におけるEPS生合成遺伝子クラスターの塩基配列を解読した結果、2つのクラスターのうち、pce1クラスター中に存在するpce1C遺伝子に一塩基置換が生じていることが確認された (58C>T)。この変異はPce1Cタンパク質においてL20Fの変異を生じるものであった。Pce1Cタンパク質はEPS生合成時に糖鎖を伸張させる働きを担う膜タンパク質群のひとつであり、この変異がどのような理由で本EPSの生物活性の変化をもたらしたのか、今後も継続して研究に取り組む予定である。
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