ヒカゲノカズラ科植物オニトウゲシバ由来の内生糸状菌Paraboeremia sp. Lsl3のku遺伝子破壊株を用い、pyrG遺伝子破壊株の作出を試みた。まずネオマイシン耐性遺伝子を選択マーカーとするpyrG遺伝子破壊ベクターを構築後、Lsl3Δku株を形質転換した。PCRによりpyrG遺伝子の破壊が確認された形質転換株は、5-FOA耐性を示す一方で、ウラシル要求性を示さなかった。また、Aspergillus属糸状菌の異種発現ホストとしての研究基盤整備を進めた。まず、A. oryzaeのpyrG遺伝子破壊株、ligD/pyrG遺伝子破壊株およびligD/argB遺伝子株の作出に成功した。さらにParaboeremia sp. Lsl3由来の生合成遺伝子PABO_007432およびPABO_005900について、出芽酵母および麹菌を宿主として異種発現を行い、これらの遺伝子の機能をin vivo実験により確認した。また、Aspergillus属糸状菌を宿主とした生合成遺伝子の異種発現を進め、得られた形質転換体の培養液について代謝物分析を行なった結果、pelletierineとともに新たなアルカロイドの生産が認められた。この構造未知の化合物を単離精製し、NMR等の分光学的手法により構造解析を行った結果、同化合物は、Lycopodiumアルカロイドと構造的関連性を持つ新規骨格化合物であることが明らかとなった。さらに、ヒカゲノカズラ科植物およびツツジ科植物より分離したPenicillium属糸状菌より三種の新規化合物を単離構造決定した。
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