研究課題/領域番号 |
20K07106
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
岩月 正人 北里大学, 感染制御科学府, 准教授 (70353464)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | マラリア / 糸状菌代謝産物 / 新規環状ペプチド化合物 |
研究実績の概要 |
マラリア治療薬の開発が地球規模で強く望まれている。このため本研究ではマラリア原虫に対する抗原虫活性を指標に微生物培養液のスクリーニングを行い、「薬剤耐性原虫にも有効」で「安全域が広く」「安価に供給可能」かつ「経口投与が可能」なマラリア治療薬開発のためのシード化合物を発見することを目的とした。 【方法】スクリーニングは高病原性の熱帯熱マラリア原虫の多剤耐性K1株およびヒト正常線維芽細胞MRC-5を用いて行った。1次スクリーニングで抗原虫活性を示したサンプルについて2次スクリーニングでMRC-5に対する細胞毒性を評価することで、原虫に対する選択毒性を有するサンプルを選択した。2次スクリーニングを通過したサンプルは再培養を行い、抗原虫活性を指標にして各種クロマトグラフィーで精製を行った。得られた活性物質はNMR、MS等 の機器分析により化学構造を明らかにした。 【結果】上記のスクリーニングで選択した糸状菌1株について検討を行い、活性物質として2種類の新規環状ペプチド化合物を単離した。NMRおよびMS/MS解析ならび改良Marfey法および改良Mosher法により構造を決定した。これらのうち新規1化合物は多剤耐性マラリア原虫の増殖をサブマイクロモーラーで阻害した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請では抗マラリア原虫活性を指標に微生物培養液のスクリーニングを行い「薬剤耐性原虫にも有効」で「安全域が広く」 「安価に供給可能」かつ「経口投与が可能」なマラリア治療薬開発のためのシード化合物(バックアップ)を発見することを目的に、 (1) in vitro抗原虫活性評価系での微生物培養液のスクリーニング、(2) 活性物質の発酵生産および単離、(3)活性物質の構造解析、(4)有望な化合物の大量取得、(5) 原虫感染マウスモデルを用いたin vivo抗原虫活性評価を行う。初年度は(1)-(3)を中心に、今年度以降は(1)-(4)を継続しつつ(5)も実施する。 初年度は既にスクリーニングで選択した糸状菌1株から抗マラリア原虫活性物質として2種類の新規環状ペプチド化合物を単離し、その構造を決定することに成功している。以上より当初の計画通り順調に進んでいると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り今年度は(1) in vitro抗原虫活性評価系での微生物培養液のスクリーニング、(2) 活性物質の発酵生産および単離、(3)活性物質の構造解析、(4) 有望な化合物の大量取得を実施しながら有望な化合物については(5) 原虫感染マウスモデルを用いたin vivo抗原虫活性評価を行う。 その候補として初年度に発見に成功した糸状菌1株からの抗マラリア原虫活性新規環状ペプチド2化合物を発酵法により、(4)大量に取得し(5) 原虫感染マウス モデルを用いたin vivo抗原虫活性評価を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実施項目(4)に関連する消耗品等の使用が次年度増えることが予想されたため約30万円を次年度使用として請求した。
|