研究課題
前年度までにオレアノール酸のサポニン誘導体であるオレアノール酸3-グルコシド(OA3Glu)はin vivoにおいて低濃度メチル水銀(MeHg)ばく露した際に、水銀の臓器蓄積を抑制することを見出しているが、低濃度MeHgばく露が生体にどのような影響を与えているか、OA3Gluがそこにどのような作用をしているのかについてほとんど明らかになっていなかった。そこで本年度は、低濃度メチル水銀(MeHg)ばく露に対するサポニン誘導体の効果を評価するため、低濃度MeHg毒性評価系の構築を試みた。MeHgの毒性発現に酸化ストレスが寄与していることから、抗酸化能の弱い抗酸化酵素グルタチオンペルオキシダーゼ4(GPx4)ヘテロ欠損マウスを低濃度MeHgの影響を検出するために用いた。GPx4ヘテロ欠損マウス及び対照群の野生型(WT)マウスへ低濃度MeHgを反復ばく露し、MeHgの毒性発現部位である脳およびGPx4の寄与が大きい精巣においてMeHgの影響を評価したところ、WT群では脳および精巣において組織レベルでの低濃度MeHgの影響は観察されなかった一方、GPx4ヘテロ欠損群では脳では組織レベルでは低濃度MeHgの影響が認められなかったものの、精巣では低濃度MeHgばく露により精細管内の障害が観察された。また、MeHgの運動機能への影響を評価するためRotarod testを行っていたが、Rotarod testでは軽微な運動機能障害を検出することが難しかったため、四肢へかかる重量を測定するDynamic weight-bearing (DWB) testを用いてMeHgの運動機能障害の評価を試みたところ、DWB testによりMeHgばく露により荷重が前脚にかかる傾向が認められ、DWB testはMeHgによる軽微な運動機能障害の検出に用いることができると考えられた。
3: やや遅れている
新型コロナウイルス感染症の流行により、動物実験を行うために必要な人員が確保できないことがあり、スムーズな実験計画進行ができなかった。
in vivoにおいてMeHg障害に対するOA3Gluの保護効果について、どのような機序によるものなのか、、MeHgによる障害が認められない低用量および、MeHgによる障害が生じる高容量のMeHgばく露条件において検討する。
新型コロナウイルス感染症流行のため、動物実験に必要な人員が確保できない期間があったため。次年度使用額は2022年度に行うOA3Gluの抗MeHg作用メカニズムを解析する動物実験に使用する。
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