本年度は、メチル水銀 (MeHg) による神経毒性に対するオレアノール酸-3-グルコシド (OA3Glu) の効果をin vivoにおいて検討した。Balb/c、雄性、5週齢のマウスに2 mg/kg、4 mg/kgのMeHgおよびOA3Gluを週5回、4週間にわたって経口投与し、大脳皮質、小脳において電気生理学的解析を行った。大脳皮質において、MeHg投与量が増加するにつれフィールドポテンシャルの低下が認められ、4 mg/kg MeHg投与群においてコントロール群に比べてフィールドポテンシャルが有意に低かった。一方、4 mg/kg MeHg+OA3Glu投与群において、4 mg/kg MeHg投与群と比べてフィールドポテンシャルが有意に高かった。小脳においても大脳皮質と同様に、4 mg/kg MeHg投与群においてコントロール群と比べてフィールドポテンシャルの有意な低下、4 mg/kg MeHg+OA3Glu投与群において、4 mg/kg MeHg投与群と比べてフィールドポテンシャルに有意な上昇が認められた。これらの結果から、OA3Gluは、大脳皮質及び小脳においてMeHgによって引き起こされる神経伝達障害を改善することが示唆された。また、4 mg/kg MeHg投与群だけでなく、2 mg/kg MeHg投与群においても電気生理学的解析により大脳皮質、小脳においてフィールドポテンシャルの低下が検出できたことから、この手法はMeHgによる影響を高感度で検出できると考えられた。 研究期間を通じた成果として、オレアノール酸サポニン誘導体の抗MeHg活性にはオレアノール酸のC3位に結合する糖構造が深く関与している可能性が示された。また、OA3GluはMeHgによる運動障害及び神経伝達障害を軽減させの抗MeHg活性を有することが示唆された。
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