研究課題/領域番号 |
20K07111
|
研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
WIN NWET 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 研究員 (80843523)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 生物活性化合物 / ミャンマー |
研究実績の概要 |
PGRMC1は,がん細胞内のヘムと結合することで単量体から二量体へと重合化し,次いで,がんの増殖に関わる上皮成長因子の受容体(EGFR)と会合することで,がん増殖シグナルを活性化する膜結合性ヘムタンパク質である。よって,PGRMC1とヘムの結合を阻害する化合物の探索は膵臓がん等の難治性がんの増殖阻害とそれらのがんの薬剤耐性阻害の両作用を有する新たながん治療薬の開発に繋がることが大いに期待される。 初年度は,アッセイ系の確立を目指し,N末の1-72アミノ酸を欠損させたPGRMC1を,N末にはグルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST),C末にはHisタグを融合したタンパク質として大腸菌にて異種発現し,GSTを切断・除去した後,ゲル濾過カラムで精製した。次に,このアポ型PGRMC1溶液にヘムを加えてインキュベーションした後に,120種類のミャンマー産植物と10種類のミャンマー産海綿の各種有機溶媒抽出液を加え,洗浄操作を繰り返すことで遊離したヘムを完全に除去し,市販のHeme assay kit溶液を加えることでPGRMC1に結合するヘム量を測定した。その結果,12種のミャンマー産植物抽出液を加えた場合において,PGRMC1に結合しているヘム量が減少していることが確認された。そこで,12種類の植物抽出液の中でPGRMC1へのヘム結合量が最も低かった抽出液を選び,PGRMC1へのヘム結合量を指標にして,シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製操作を繰り返すことで,活性を保持する2つのフラクションを得た。現在,これらのフラクションについて,HPLCを用いた分画を進めているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の主たる目標であったPGRMC1の2量体形成を阻害するアッセイ系の開発について,洗浄操作の改善や感度をより高めることなど,アッセイ系を改善する必要はまだあるが,現在までに構築したアッセイ系において植物抽出液に差が見られたことから,最低限のアッセイ系は構築できたものと考えている。また,本アッセイ系を用いて化合物の単離操作に入ることができたことから,総合的に見て概ね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
アッセイ系の確立において,遊離ヘムの残存が多いため,アッセイの結果が安定しないという課題が残された。これについては,洗浄に使用するバッファーなどの条件をさらに詳細に検討することで,PGRMC1の2量体形成阻害アッセイを安定して効率的に行えるように改善を図る。また,現在単離操作を進めている植物からの天然阻害剤の探索を早急に終わらせて,活性を示した他の植物抽出液からも活性本体の単離を進めることで,PGRMC1の2量体形成を妨げる天然阻害剤の探索を進める。
|