研究実績の概要 |
本研究は生薬の国内自給率向上を志向した,漢方生薬「黄連」の原植物の育種に関する研究である。近年,中国に依存した原料生薬の供給体制から脱却するため,生薬の国産化の動きが活発になってきたが,依然として国内自給率は10%程である。そこで,かつて国内自給率が100%であり,海外に輸出していたこともある黄連に着目し,優良品種の開発を目的とした。本研究では,キクバオウレンとセリバオウレンが共存する自生地から雑種個体を見出し,既存の野生株に対する成分化学的な優位性および収穫重量などの栽培における優位性を明らかにした。
①オウレン3系統の鑑別法:オウレン3系統を鑑別する方法としてリアルタイムPCR法を用いた検討を行った。THBO遺伝子におけるSNPを利用し,キクバオウレン,セリバオウレンに特異的なプローブを作製し解析したところ,オウレン3系統の鑑別に成功した。 ②オウレン3系統の品質評価:DNA解析によって鑑別した3系統の含有成分及び粉末の色彩を測定した結果,Berberine, Jatrorrhizine, Palmatine含量の差異は認められなかったが,Coptisine含量についてはキクバオウレン,雑種,セリバオウレンの順に高含量であり,各系統間には有意な差が認められた。また,粉末の色彩についてもL*値及びa*値に差異が認められた。以上より,3系統の品質における差異を明らかにした。 ③オウレン3系統の成長評価:DNA解析によって鑑別した3系統の株分けを行い,圃場で20ヶ月栽培した結果,根茎の長さにおける増加比はセリバオウレンが最も大きく,キクバオウレン,雑種は同等であった。一方,根茎の重量における増加比では雑種が最も大きく,セリバオウレンが最も小さい値となった。また,細根重量では雑種が最大となった。以上より,3系統の栽培特性が明らかになった。
|