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2020 年度 実施状況報告書

海産天然物をシーズとした核内受容体PXRアンタゴニストの開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K07116
研究機関岡山大学

研究代表者

久保田 高明  岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (60399954)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード核内受容体 / Pregnane X Receptor / アンタゴニスト / 海洋生物 / 海綿動物 / 渦鞭毛藻 / 海産天然物 / 天然有機化合物
研究実績の概要

薬物代謝は生体に取り込まれた異物を体外に排出するための重要な解毒機構であるが、同時に異物とみなされた薬物の薬効を減弱させてしまう。核内受容体の1つであるPregnane X Receptor(PXR)は、リガンドの結合により薬物代謝酵素や薬物トランスポーターの発現を誘導し、薬物代謝を亢進させることによって様々な薬物の薬効を減弱させる。PXRの機能を阻害すれば薬物の薬効減弱を防ぐことができるが、選択的な阻害剤は合成化合物のSPA70のみであるため、新しいタイプの阻害剤の開発が求められている。本研究では、PXR阻害剤の探索源として十分に研究が行われていない海洋生物を研究材料として、薬物の薬効減弱を防ぐ新たな医薬品のリード化合物の創出を目指して研究を進めている。
本年度は、Amphidinium属の渦鞭毛藻から2個の新規マクロリドを、Agelas属の海綿動物から1個の新規ジテルペンアルカロイドを、Dysidea属の海綿動物から1個の新規ポリヒドロキシステロールを、Hippospongia属の海綿動物から5個の新規メロテルペノイドを、Pseudoseratina属およびSuberea属の海綿動物から3個の新規ブロモチロシンアルカロイドを単離することに成功した。各種スペクトル(NMR、IR、MSなど)および計算化学により得られたデータに基づいて新規化合物の構造解析を行い、平面構造および一部の立体化学を明らかにした。
現在、本年度単離した新規化合物のうち、立体化学が未決定のものについて構造解析を行うとともに、これまでに見いだした海産天然物のPXRに対する親和性評価の実施に向けて準備を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

海洋生物(海綿動物および渦鞭毛藻)から12個の新規化合物を単離し、平面構造および一部の立体化学を明らかにしたが、10個の化合物については立体化学を含めた完全な構造決定には至っていない。また、新型コロナウイルスの感染拡大や研究代表者の異動に伴い研究活動が停滞したため、海産天然物のPXRに対する親和性評価を実施するまでには至らず、海洋生物採集や成果発表のための旅行も十分に行えなかったため。

今後の研究の推進方策

令和3年度も新規海産天然物の探索を継続して行うとともに、令和2年度に得られた新規化合物の完全な構造決定を行う。また、新型コロナウイルスの感染拡大状況を鑑みながら、可能な範囲で海洋生物の採集を行う。さらに、新規および既知海産天然物のPXRに対する親和性評価を実施し、PXRに親和性を示した海産天然物の作用解析を実施するとともに、核内受容体 Constitutive Androstane Receptor(CAR)に対する親和性評価や作用解析も実施し、両核内受容体に対する作用や選択性を評価する。PXRに対してアゴニストあるいはアンタゴニスト作用を示す海産天然物を用いて構造活性相関の研究を行い、より選択的で強力なPXRアンタゴニストの創出を目指す。

次年度使用額が生じた理由

令和2年度は、海洋生物(海綿動物および渦鞭毛藻)から12個の新規化合物を単離することに成功したが、10個の化合物については完全な構造決定には至らなかった。また、新型コロナウイルスの感染拡大や研究代表者の異動に伴い研究活動が停滞したため、海産天然物のPXRに対する親和性評価を実施するまでには至らず、海洋生物採集や成果発表のための旅行も十分に行えなかった。これらの理由により次年度使用額が生じた。
令和3年度も新規海産天然物の探索を継続して行うとともに、令和2年度に得られた新規化合物の完全な構造決定を行う。また、新型コロナウイルスの感染拡大状況を鑑みながら、可能な範囲で海洋生物の採集を行う。さらに、新規および既知海産天然物のPXRに対する親和性評価を実施し、PXRに親和性を示した海産天然物の作用解析を実施するとともに、核内受容体CARに対する親和性評価や作用解析も実施し、両核内受容体に対する作用や選択性を評価する。PXRに対してアゴニストあるいはアンタゴニスト作用を示す海産天然物を用いて構造活性相関の研究を行い、より選択的で強力なPXRアンタゴニストの創出を目指す。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Kamiohnoyneosides A and B, two new polyacetylene glycosides from flowers of edible Chrysanthemum "Kamiohno"2021

    • 著者名/発表者名
      Kurimoto, S.; Fujita, H.; Kawaguchi, S.; Sasaki, Y. F.; Nakamura, T.; Kubota, T.
    • 雑誌名

      J. Nat. Med.

      巻: 75 ページ: 167-172

    • DOI

      10.1007/s11418-020-01443-4

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Macrocarquinoids A-C, new meroterpenoids from Sargassum macrocarpum2021

    • 著者名/発表者名
      Niwa, H.; Kurimoto, S.; Kubota, T.; Sekiguchi, M.
    • 雑誌名

      J. Nat. Med.

      巻: 75 ページ: 194-200

    • DOI

      10.1007/s11418-020-01449-y

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Integrated omics unveils the multifaceted secondary metabolism landscape of a basal dinoflagellate2020

    • 著者名/発表者名
      Beedessee, G.; Kubota, T.; Arimoto, A.; Nishitsuji, K.; Waller, R. F.; Hisata, K.; Yamasaki, S.; Satoh, N.; Kobayashi, J.; Shoguchi, E.
    • 雑誌名

      BMC Biol.

      巻: 18 ページ: 139

    • DOI

      10.1186/s12915-020-00873-6

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 沖縄産Dysidea属海綿から単離したポリヒドロキシステロールの構造および活性2021

    • 著者名/発表者名
      栗本慎一郎、石塚芽衣菜、武田郁恵、矢口貴志、小林淳一、久保田高明
    • 学会等名
      日本薬学会第141年会
  • [学会発表] 沖縄産Verongida目海綿から単離した新規ブロチロシンアルカロイドCeratinadin類およびMa'edamine類の構造2020

    • 著者名/発表者名
      久保田高明、栗本慎一郎、大野泰斗、清野皐月、穗苅玲、石山亜紀、岩月正人、大村智、小林淳一
    • 学会等名
      第62回天然有機化合物討論会
  • [図書] The Alkaloids: Chemistry and Biology (Vol. 84, Chapter One: The manzamine alkaloids)2020

    • 著者名/発表者名
      Kubota, T.; Kurimoto, S.; Kobayashi, J.
    • 総ページ数
      124
    • 出版者
      Academic Press
    • ISBN
      978-0-12-820982-0

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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