研究課題/領域番号 |
20K07120
|
研究機関 | 松山大学 |
研究代表者 |
天倉 吉章 松山大学, 薬学部, 教授 (50321857)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | タンニン / 天然物 / 品質評価 |
研究実績の概要 |
天然資源由来の生薬や機能性食品素材においては,二次代謝物としてタンニンを含むものが多い.タンニンは低分子なものは構造解析が進み,それを指標に分析評価できるようになりつつある.一方,高分子量の縮合型タンニン(コンデンスドタンニン)については呈色による評価が主で,それらのみを分析評価する具体的な方法はみあたらない.本研究は,分析困難とされるコンデンスドタンニンの標準品化,及び定量法を提案し,品質評価法への応用に向けた基礎検討を目的とする.今年度は,生薬,食品原料中の高分子量コンデンスドタンニン画分を分離精製し,その化学的特性を評価することで標準品モデルとしての可能性を検討した.素材としてケイヒ,ダイオウ,ヘーゼルナッツについて抽出物を調製後,カラムクロマトグラフィーによる分離精製を行った.得られた各画分について,ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によりモニターし,各高分子画分を得ることができた.高分子画分については,NMR及び分解反応による構成ユニットの構造解析を行った.結果として,得られたケイヒ高分子量画分は,epicatechinがprocyanidin Bタイプで縮合している重量平均分子量約3万(ポリスチレン標準品を使用)の画分であることが示された.ダイオウについては,procyanidin Bタイプの縮合体で,重量平均分子量約3万の高分子量画分として得られた.ヘーゼルナッツについては,catechin及びepicatechinがprocyanidin Bタイプで縮合している高分子化合物で,重量平均分子量約7万の画分であることが示唆された.このように,各素材における高分子量コンデンスドタンニン画分を調製し,各ユニット及びその縮合タイプ,さらに重量平均分子量を算出することができ,標準品として必要な情報となり得る化学的特徴付けの可能性が示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前半は新型コロナウイルス感染防止対策として大学が入構禁止となり,施設を使用できない期間もあったが,標準品モデルとなる素材の画分を調製して構造解析する方向性は整えることができた.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果に基づき,他の生薬・食品素材(チョウトウコウ,ゴシツ,サンソウニンなどを予定)について高分子量コンデンスドタンニン画分を調製し,NMR及び分解反応により構造解析を行い,各素材に特徴的な標準品としての化学的情報について検討する.また,ロットの異なる同じ素材で,同様の標準品モデルを得ることができるか,ロット間による検討を実施する予定である.さらに次のステップとして,調製した各標準品モデルを使用した素材中の高分子量コンデンスドタンニンを評価する可能性を検討するために,各素材の標準品及び試料溶液を調製し,GPC分析による定量法について,分析条件設定を含めた検討を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費について生じた残額は,年度をまたいで購入希望した試薬等消耗品分である.
|