研究課題
本年度は、歯周病菌増殖抑制活性についてはウイキョウ、抗糖化活性についてはグリーンルイボスについて研究を行った。ウイキョウ(Foeniculum vulgare)はセリ科ウイキョウ属植物で、古代から食用や薬用に広く用いられてきたハーブの1種である。先行研究により、歯周病菌Porphyromonas gingivalis (Pg菌)の増殖抑制活性が観察されたことから成分研究を行った。ウイキョウをn-hexane, EtOAc, EtOHを溶媒として順次抽出を行った。得られた抽出エキスについて国立感染症研究所の中尾博士にMICを測定して頂いたところ、n-hexane抽出エキスのMICが顕著に低値を示した。そこで、n-Hexane抽出液について中圧カラムで粗分画した後、HPLCを用いて精製しFN-1からFN-16と仮称する化合物を得た。得られた化合物のうちFN-15が最もPg菌増殖阻害活性が強く、その化学構造は各種NMRを測定し2重結合を1つ持つ不飽和脂肪酸と推測された。ルイボス(Aspalathus linearis)はマメ亜科のアスパラトゥス属の一種で、南アフリカ共和国のセダルバーグ山脈一帯にのみ自生する。グリーンルイボスとはルイボスを発酵させずに乾燥させた素材でルイボスよりも二次代謝産物が多く含まれることが知られている。今回、飲食可能な抗糖化素材の探索研究の一環として、CMA(Nε-(carboxymethyl) arginine)生成阻害活性の確認されたグリーンルイボスエキスについて化合物の同定を目的に成分研究を行った。グリーンルイボスをメタノールて抽出し、得られエキスをn-hexaneで脱脂後、ポリスチレンゲルにより繰り返し分画した。エキスを含めた計10画分について抗CMA抗体を用いたELISA法によるCMA生成阻害試験を行ったところ、画分⑧に強い活性を確認した。
2: おおむね順調に進展している
コロナウイルス感染症の影響で、研究活動に割ける時間の制約が大きかったが、確実に化合物の同定を進めることができた。残念ながら、学会活動などは難しい状況であった。
ウイキョウについては、FN-15の化学構造を、質量分析と共に市販の標準品との比較により確定させる必要がある。また、グリーンルイボスについては、画分⑧をさらに詳細に成分研究を行い、化合物レベルの抗CMA活性を検討する必要がある。さらに、当初予定していたプレニル基を含む化合物を含む素材について、入手可能な素材に絞り抽出エキスを作成して生物活性を指標に分離精製を行っていく予定である。
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