研究課題/領域番号 |
20K07126
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
福土 将秀 札幌医科大学, 医学部, 教授 (60437233)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 免疫チェックポイント阻害薬 / 薬物動態 / 薬効 / 抗薬物抗体 / 最適使用法 |
研究実績の概要 |
本研究では、免疫チェックポイント阻害薬の薬物動態と薬効および免疫原性の関連解明を目的に、今年度は、臨床研究(CHOPIN Study)に登録されたDiscoveryコホート(240名)を対象に、PD-1阻害薬ニボルマブ(Nivo)およびペムブロリズマブ(Pembro)に対する抗薬物抗体(ADA: anti-drug antibody)の抗体価について精査した。先ず、スクリーニング試験で陽性であったサンプルについて、その後の確認試験によって陽性が確定したサンプルを対象に、ネガティブコントロール(健常人由来pooledドナー血漿)を用いて2倍ずつ段階希釈し、カットポイントを上回る最大希釈率を抗体価とした。NivoおよびPembro治療患者において、ADAの抗体価の中央値(範囲)は、それぞれ8倍(1-256倍)および4倍(1-256倍)であった。また、ADAは、両薬剤ともに治療開始後早期に発現していることが明らかとなった。さらに、NivoのADA陽性率は、CTLA-4阻害薬イピリムマブ(Ipi)との併用療法(Nivo+Ipi)を施行された患者において、Nivo単剤治療患者と比較して2倍以上高いことが判明した。本結果は、過去に実施された臨床試験における既報とも概ね対応していた。一方、治療開始(baseline)時にADAが陽性であった症例において、点滴治療開始後に38℃以上の発熱が高頻度で認められた(75% [6/8])。従って、PD-1阻害薬に対する免疫原性は、発熱などの全身性症状に影響を及ぼす可能性が示唆された。 以上、実臨床における日本人患者のPD-1阻害薬NivoおよびPembroに対するADAの抗体価に関するデータを初めて明らかにした。現在、ADA陽性サンプルを用いて、中和活性の有無について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、免疫チェックポイント阻害薬に対するADAの抗体価について、その分布と経時的プロファイルに関する検討を進め、PD-1阻害薬ニボルマブおよびペムブロリズマブに関して、一定の研究成果が得られた。現在、3段階アプローチの最終段階である中和抗体評価に取り組み、臨床アウトカムとの関連について解析を進めている状況である。 以上より、令和3年度の進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は、前年度から引き続き、中和抗体検出の為の競合的リガンド結合法を用いたアッセイ系のパフォーマンス向上を目指して、drug tolerance改善策を検討する。本アッセイ系へのサンプル中の遊離薬物による干渉を抑える為に、ACE法およびSPEAD法を前処理ステップに組み入れて、ADAの中和活性の評価を行う。さらに、基礎的な検討パートとして、腫瘍微小環境におけるPD-L1の発現調節について、N結合型糖鎖付加を媒介するリボフォリンに着目し、3次元培養下における遺伝子ノックダウンやタイムラプス観察等を用いて、リボフォリンの役割を調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
他からの研究助成金を有効に活用することができたことにより、当該助成金に未使用残額が生じた。翌年度の研究計画に従って、消耗品費および研究成果の学術雑誌への投稿料と英文校正料等に充てる予定である。
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