研究課題
今年度は、CTLA-4阻害薬イピリムマブとトレメリムマブ、PD-1阻害薬セミプリマブの薬物動態、およびニボルマブとペムブロリズマブに関する中和抗体アッセイを中心に検討を行った。臨床研究(CHOPIN Study)に登録されたDiscoveryコホートを対象に、ニボルマブとイピリムマブ併用療法が施行された患者の血液サンプルを用いて、イピリムマブ投与終了後の血中濃度推移を評価した。その結果、薬物投与終了後も体内にイピリムマブが、1年近く長期に残留していることが初めて明らかとなった。本結果は、我々がこれまでに報告してきたPD-1阻害薬ニボルマブおよびペムブロリズマブの血中における長期滞留性の結果ともよく対応していた。また、イピリムマブの消失半減期の中央値は約38日と推定され、外国人悪性黒色腫患者における報告値(17.3日)と比べて、2倍以上延長していることが判明した。さらに、新規薬剤であるトレメリムマブとセミプリマブの薬物動態評価系を、これまで我々が開発し、PD-1/PD-L1阻害薬の血中濃度測定に用いてきた ELISAを応用し評価した結果、これまでと同様に良好な薬物濃度測定結果が得られることを確認できた(定量限界:0.01 μg/mL)。ニボルマブおよびペムブロリズマブに対する中和抗体のアッセイについて、市販の抗薬物抗体を陽性コントロールとして用い検討した。中和抗体検出の際のdrug tolerance改善策を検討した結果、競合的リガンド結合アッセイに対してACE法を前処理ステップとして組み入れることで、drug toleranceが顕著に改善し、中和活性の評価が可能であることを確認できた。現在、抗薬物抗体/中和抗体陽性サンプルを用いて、免疫原性の個人差の要因について解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
当初の研究計画通り、PD-1阻害薬ニボルマブおよびペムブロリズマブに対する中和抗体について、ACE法を組み入れた評価系を開発することができた。さらに、実臨床における日本人患者のイピリムマブの消失特性を明らかにすることができた。また、新規PD-1阻害薬セミプリマブおよびCTLA-4阻害薬トレメリムマブの薬物動態評価系を、従来のELISAをベースに開発することもできた。以上より、令和4年度の進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断した。
最終年度は、臨床研究(IMPACT Study)に登録された症例を対象に、免疫チェックポイント阻害薬の血中濃度および抗薬物抗体の評価を実施する。そのうち一部の症例をValidationコホートとして、我々の先行研究(CHOPIN Study)のDiscoveryコホートで得られた免疫原性に関する結果の検証を実施する。また、その個人差の要因について、患者背景や臨床情報を含めた関連解析に注力して研究を進めていく。
他からの研究助成金を有効に活用することができたことにより、当該助成金に未使用残額が生じた。翌年度の研究計画に従って、消耗品費および研究成果の学術雑誌への投稿料と英文校正料等に充てる予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Intern Med
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10.2169/internalmedicine.7388-21
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https://web.sapmed.ac.jp/pharm/