研究課題
本研究では、免疫チェックポイント阻害薬のPK/PD解析および免疫原性の評価に基づく最適使用法の開発を目的に、最終年度は、CTLA-4阻害薬イピリムマブに対する抗薬物抗体(anti-drug antibody: ADA)の実態解明および新規PD-1阻害薬セミプリマブの薬物動態評価を実施した。先ず、初年度において構築した酸解離ブリッジングELISAによるADAアッセイに基づき、イピリムマブ使用症例(18名)の血清を用いて評価した結果、1名(5.6%)の患者においてのみADA陽性が確認された。本症例では、ニボルマブとイピリムマブ併用療法開始後早期に(2サイクル目)、一過性にADA陽性(抗体価2倍)となっていた。また、興味深い結果として、本症例では、ニボルマブに対するADAも持続的陽性であり、両方の抗体薬に対するADAがダブルポジティブであることが判明した。3サイクル施行後に重篤な免疫関連有害事象(immune-related Adverse Event: irAE)の発現によって治療中止となっていたことから、ADAがirAE発現に影響を及ぼしていた可能性が考えられた。一方、子宮頸がん患者(7名)におけるセミプリマブ血中濃度を本研究において構築したELISAによって測定した結果、定常状態の平均トラフ濃度は約82 ug/mLであり、治験時の日本人における報告値と類似していることが明らかとなった。また、病勢増悪のため治療中止となった症例の定常状態の平均トラフ濃度は約40 ug/mLであり、全体の平均値と比べて低いことが判明した。以上の研究成果は、免疫チェックポイント阻害薬の適正使用を推進する上で有用な知見を提供するものであり、TDMを活用した薬物血中濃度およびADA評価による個別化医療の可能性が示唆された。
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