研究課題/領域番号 |
20K07131
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
奥田 真弘 大阪大学, 医学部附属病院, 教授 (70252426)
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研究分担者 |
前田 真一郎 大阪大学, 薬学研究科, 講師 (60452398)
池村 健治 大阪大学, 医学部附属病院, 講師 (70513935)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シスプラチン / 薬物間相互作用 / 有機カチオントランスポータ2 / 腎障害 / 医療リアルワールドデータ |
研究実績の概要 |
シスプラチン(CDDP)の重大な副作用である腎障害は用量規定因子であり、治療継続の大きな妨げとなる。CDDPによる腎障害の有効な予防法は未だ不十分な状況にあり、有効かつ安全な腎障害予防法の確立は喫緊の課題である。CDDPの腎障害発症には、有機カチオントランスポータ2(OCT2)を介した腎組織中へのCDDPの蓄積が深く関与することが示唆されており、OCT2阻害作用を有する薬物は、CDDPの腎障害の予防薬となる可能性がある。近年、医療リアルワールドデータを利活用し、新たな創薬ターゲットを見出すアプローチが注目されている。本研究では、FDA有害事象報告(FAERS)データベースを解析し、既存承認薬から新たなOCT2阻害作用を有する薬物を探索した。2014年7月から2019年12月の期間にFAERSに登録された報告のうちCDDPを投与された報告を対象に解析したところ、30種の薬物がCDDPの腎障害を軽減できる可能性を見出した。その中から、5-HT3受容体拮抗薬(5-HT3RA)に着目し、大阪大学医学部附属病院において、FP(5-FU 800mg/m2, CDDP 80mg/m2)療法を初めて施行された患者110名を対象とし、CDDPの腎障害発症に及ぼす5-HT3RA併用の影響を後方視的に調査した。その結果、パロノセトロンは、他の5-HT3RAに比べ、CDDP誘発性腎障害を軽減できる可能性が示唆された。現在は、HEK-hOCT2細胞及びHEK-vector細胞におけるCDDPの輸送に対する5-HT3RAの阻害効果について検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、動物実験系によるCDDPの体内動態及に及ぼすOCT2阻害候補薬の保護効果に関する検証を予定していたが、後方視的研究及びin vitro細胞実験系におけるCDDPの輸送に対するOCT2阻害候補薬の阻害効果を先行実施したため、次年度は、動物実験による検討を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
In vivo動物実験系によるCDDPの体内動態及び腎障害に及ぼすOCT2阻害候補薬の影響に関する検討 FAERSデータベース解析及びin vitroの実験結果に基づき、臨床における薬物間相互作用の可能性の高いOCT2阻害候補薬を用い、CDDPの体内動態及び腎障害に及ぼすOCT2阻害候補薬の影響について検討する。Wistar系雄性ラット(9週齢)を用い、CDDP(7.5mg/kg)並びにOCT2阻害候補薬を同時腹腔内投与した後、頸静脈から継時的に採血を行う。さらに、CDDP投与72時間後に、腎臓を摘出する。血中及び腎組織中CDDP濃度はICP-MSにより測定を行う。腎障害は、血清中クレアチニン値・BUN、尿中L-FABP発現量、並びに組織学的観察により評価する。なお、尿中L-FABP発現量は市販のELISAキットを使用して測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定であった試薬の納期が遅れ、今年度内に購入することができず、未使用額が発生した。未使用額は次年度の物品費として使用する。
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