研究課題/領域番号 |
20K07132
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
合田 光寛 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (40585965)
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研究分担者 |
石澤 啓介 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 教授 (60398013)
石澤 有紀 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (40610192)
座間味 義人 岡山大学, 大学病院, 教授 (70550250) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 薬剤性腎障害 / 医療ビッグデータ / 支持療法 |
研究実績の概要 |
シスプラチンは副作用として悪心・嘔吐および腎障害の発生頻度が高いことが知られている。臨床で用いられている抗がん剤誘発悪心・嘔吐に対する制吐薬の一つである5-HT3受容体拮抗薬は、第一世代のオンダンセトロン、第二世代のパロノセトロンなど多くの種類があり、化学療法レジメンによって使い分けられているのが現状である。また、シスプラチンおよびオンダンセトロンはMultidrug and toxin extrusion (MATE) 型輸送体を介して腎臓近位尿細管から排泄されることが知られており、これまでにモデルマウスを用いた検討でオンダンセトロンがシスプラチン誘発腎障害発症のリスク因子となる可能性が示唆されている。そこで、臨床で用いられている各種5-HT3受容体拮抗薬のシスプラチン誘発腎障害に対する影響を検討した。 シスプラチン誘発腎障害モデルを用いた検討の結果、第一世代のオンダンセトロンの前投与によりシスプラチン単独投与群と比較して腎障害の有意な増悪が認められたが、第二世代のパロノセトロンの前投与では、悪化が認められなかった。また、FAERS(大規模副作用症例報告データベース)を用いて、各種5-HT3受容体拮抗薬のシスプラチン誘発腎障害に対する影響を解析した結果、シスプラチンと第一世代5-HT3受容体拮抗薬との併用により腎障害の報告オッズ比が1より大きくなることが明らかになった。さらに、徳島大学病院の診療情報を用いた後方視的調査研究により、第二世代5-HT3受容体拮抗薬併用患者の方が第一世代5-HT3受容体拮抗薬併用患者と比較して、腎障害発症率が低いことが明らかになった。 本研究の結果より、第二世代5-HT3受容体拮抗薬は第一世代と比較してシスプラチン腎障害に対する影響が少ない可能性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスを用いたシスプラチン誘発腎障害モデルを用いた検討及びFAERSで明らかにした第一世代5-HT3受容体拮抗薬のシスプラチン誘発腎障害に与える影響に関して、徳島大学病院の診療情報を用いた後方視的調査研究により、第二世代5-HT3受容体拮抗薬併用患者の方が第一世代5-HT3受容体拮抗薬併用患者と比較して、腎障害発症率が低いことが明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討で明らかになった第一世代5-HT3受容体拮抗薬と第二世代5-HT3受容体拮抗薬のシスプラチン誘発腎障害に与える影響の違いに関して、その作用機序を明らかにするため、MATE型輸送体の阻害活性を比較する。具体的には、MATE型輸送体安定発現HEK293細胞を用いて、MATE型輸送体基質であるDAPIの取り込みに対する各種5-HT3受容体拮抗薬の阻害率を算出し、比較を行う。
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