研究課題
シスプラチンは副作用として悪心・嘔吐および腎障害の発生頻度が高いことが知られている。抗がん剤誘発悪心・嘔吐に対する制吐薬の一つである5-HT3受容体拮抗薬(5-HT3RA)は、第一世代のオンダンセトロン、第二世代のパロノセトロンなど多くの種類があり、化学療法レジメンによって使い分けられているのが現状である。また、シスプラチンおよびオンダンセトロンはMATE型輸送体(MATE)を介して排泄されることが知られており、これまでにモデルマウスを用いた検討でオンダンセトロンがシスプラチン誘発腎障害(CIN)発症のリスク因子となる可能性が示唆されている。そこで、臨床で用いられている各種5-HT3RAのCINに対する影響を検討した。CINモデルを用いた検討の結果、第一世代のオンダンセトロンの前投与によりシスプラチン単独投与群と比較してCINの有意な増悪が認められたが、第二世代のパロノセトロンの前投与では、悪化が認められなかった。また、FAERS(大規模副作用症例報告データベース)を用いて解析した結果、シスプラチンと第一世代5-HT3RAとの併用によりCINの報告オッズ比が1より大きくなることが明らかになった。さらに、徳島大学病院の診療情報を用いた後方視的調査研究により、第二世代併用患者の方が第一世代併用患者と比較して、CIN発症率が低いことが明らかになった。第一世代と第二世代のCINに与える影響の違いに関して、その作用機序を明らかにするため、MATEに対する阻害活性を比較した。MATE安定発現HEK293細胞を用いて、MATEの基質であるDAPIの取り込みに対する各種5-HT3RAの阻害率を算出した結果、第一世代は第二世代と比較して、有意に50%阻害濃度が小さく、MATEに対する阻害活性が高いことが明らかになった。本研究の結果より、第二世代5-HT3RAは第一世代と比較してCINに対する影響が少ない可能性が示唆される。
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