研究課題/領域番号 |
20K07134
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
猿渡 淳二 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 教授 (30543409)
|
研究分担者 |
古郡 規雄 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (20333734)
城野 博史 熊本大学, 病院, 准教授 (40515483)
鬼木 健太郎 熊本大学, 大学院生命科学研究部(薬), 准教授 (00613407)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 精密医療 / 精神神経薬理学 / ファーマコメトリクス / 薬理ゲノム学 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
うつ病は人口の3%以上が、統合失調症は約1%が罹患する極めて頻度の高い精神疾患である。その治療の中心は薬物療法であるが、寛解・再発を繰り返し、約30%の患者で治療抵抗性を示す。加えて、抗精神病薬の長期投与では、肥満や糖尿病等の生活習慣病関連病態をきたし、服薬アドヒアランスの低下の他、QOLの低下や心血管イベントの増加(死亡率の増加)にも関係することが臨床で問題となっている。 本研究では前年度に引き続き、抗うつ薬の新たな薬物投与設計法の開発を目指して、パロキセチン(PAX)を対象薬として、患者情報等による治療反応性の予測を試みた。はじめに、PAX服用歴のあるうつ病患者86名を対象にして、血中PAX濃度を用いて、MADRSを指標とした治療寛解率を予測するモデルを非線形混合効果モデルで構築した。その後、実用化を見据えて、上記モデルで組み込まれた血中薬物濃度と様々な個体要因から、機械学習により治療寛解の有無を予測する決定木を作製し、血中薬物濃度等の情報から、PAX投与後の治療反応性を事前に予測できる可能性を示唆した。 一方、統合失調症(SCZ)患者は、肥満やメタボリックシンドロームの合併率が高く、死亡率の増加にも繋がっていることから、臨床で大きな問題となっている。この原因の一つとして、抗精神病薬誘発性の代謝異常が挙げられ、薬物毎に体重増加リスクが異なる。これまでに、女性患者では、抗精神病薬3剤以上服用者において過体重の頻度が高く、男女共にリスペリドン高用量服用者で、過体重の頻度が高いことを明らかにした。そこで、特に多剤併用の組み合わせに着目し、どのような薬剤の組み合わせが統合失調症患者の生活習慣病と関係するかについて、深層学習での予測を試みており、現在解析中である。 以上の研究により、臨床薬学的観点からうつ病や統合失調症の個別化投与設計の実現に挑戦する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の対象となるうつ病や統合失調症について、研究実績に記載した通り、臨床情報の収集と解析を進めており、一部ではあるが、個別化薬物療法の実現可能性も示すことができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度の研究を継続する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響で、当初予定していた本研究課題に関わる出張が中止になったため次年度使用額が生じた。今後実験用の薬品及び消耗品費として使用する予定である。
|