研究課題/領域番号 |
20K07135
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
保嶋 智也 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 講師 (50753555)
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研究分担者 |
湯浅 博昭 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (20191471)
山城 貴弘 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 助教 (20826614)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | トランスポーター / 尿酸 / 尿酸結晶 / 高尿酸血症 / 痛風 / リソソーム |
研究実績の概要 |
生体における尿酸結晶の可溶化機構がリソソームに存在するとの観点から申請者らが同定した新規トランスポーターlysosomal urate efflux transporter 1(LUET1)の詳細な機能解析を行った。解析には、前年度に確立した細胞膜局在型LUET1(LUET1-LLAA)を利用した簡易評価系を採用した。 まず、LUET1を介した尿酸輸送は顕著な飽和性を示し、Michaelis-Menten式にあてはめ計算を行ったところ親和性を示すKmは0.98 mMと算出された。この値は、尿酸の溶解度に近いことから、リソソーム内に取り込まれた尿酸結晶を効率的に可溶化させるには、有利な機能的性質であると考えられる。また、既知の尿酸トランスポーターやアニオントランスポーターの典型的な阻害剤(benzbromarone、probenecid、DIDS、PAHなど)は、LUET1の尿酸輸送に対して臨床上問題となるような強い阻害効果は認められなかった。 さらに、LUET1の一塩基多型は、難病を含めた様々な疾患を誘発することが報告されている。そこで、現在までに疾患の発症と関連していると報告されている19個の一塩基多型を導入したLUET1を作製し、尿酸の輸送活性を検討した。その結果、すべての一塩基多型で有意な尿酸輸送活性の低下が見られ、そのうちの17個については、ほぼ尿酸輸送活性を消失していた。LUET1の一塩基多型に起因した疾患の発症と血中尿酸レベルの因果関係については現在までに不明であることから、そのメカニズムの解明は、今後の重要な検討課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LUET1の尿酸輸送機能解析はほぼ完了させることが出来た。また、LUET1の一塩基多型は、難病を含めた様々な疾患の発症とも関与していることが報告されていることから、現在までに疾患の発症に関与していると報告されている一塩基多型を導入したLUET1を作製し、尿酸輸送活性を検討した。その結果、その多くの一塩基多型を持つLUET1は、尿酸輸送活性を有していなかった。以上のように、LUET1の機能解析についてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでにマウスマクロファージ由来RAW264細胞を用いた検討から、尿酸結晶の暴露によるIL-1bの発現誘導が、LUET1の過剰発現により抑制できることが分かった。今後、LUET1トランスジェニックマウスを作製し、LUET1の尿酸結晶による炎症誘導の抑制効果についてin vivoレベルで調べていく予定である。さらに、ヒト単球系白血病細胞由来THP-1細胞をPMA処理によりマクロファージに分化させた細胞では、分化前と比較しLUET1の発現が10倍程度上昇していた。このことからLUET1のマクロファージにおける発現制御機構、さらには尿酸結晶暴露によるLUET1の発現変動についても調べていく予定である。
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