研究課題
母体からの胎児への外来異物の毒性を検討する上で、始めに肝薬物代謝酵素に対して影響を与える既知化合物を用い、ヒト胎盤由来BeWo細胞への影響を検討した。肝細胞で酵素誘導効果の認められるリファンピシン、フェノバルビタール、β-ナフトフラボンを培地中に添加し、3日間培養を行った。その後、各種指標基質酵素活性とmRNAレベルについて経時的に検討を行った。チトクロムP450(CYP)2BおよびCYP3Aが触媒する酵素活性に関して3日間培養後に上昇傾向が認められた。一方、β-ナフトフラボンでは、24時間の時点でもmRNAレベルと活性に関して有意に増加が認められたことから、今回用いたBeWo細胞について、肝臓と同様の酵素誘導メカニズムが備わっていることが確認できた。この結果をもとにば、母体が摂取し、肝臓で代謝活性化されたのち胎盤では、どのような変化が生じるかをトランズウェルメンブラン上にヒト肝がん由来HepaRG細胞を播種してBeWo細胞との共培養系の確立を試みた。トランズウェル内に、β-ナフトフラボンを添加し経時的に酵素活性測定を行ったところ共培養下でもBeWo細胞でレゾルフィン代謝活性に有意な上昇が認めらた。肝臓側に添加した化合物が胎盤細胞側に到達し影響が認められれう課程でそれぞれの細胞の膜透過性が関連しているかどうかについて、膜透過性評価を行った。陽性対象化合部tのカフェインの透過性では、一般的に透過性評価にしぃ用されるヒト小腸由来Caco-2細胞と同様に70%以上の透過効率が算出された。一方,陰性対処化合物のルシファイエローについて、CaCo2細胞に比べ、透過性がわずかに亢進していたことから、BeWo細胞は、比較的緩いタイトジャンクションが形成されていることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
昨年は、緊急事態宣言の発令で、一時計画を中断せざる負えない状況ではあったが、現在のところ、初年度-次年度に予定していた内容の実験について、検討はスムーズに行えている。
立ち上げた肝臓と胎盤細胞の共培養系を用いて、時間経過に伴った肝および小腸細胞を経由した化合物とその代謝物が胎盤細胞に与える影響を、培地中の化合物と代謝物量、さらに細胞内に取り込まれた量から検証する。透過した薬物量から透過係数(Papp)を求める。化合物の消失速度定数(kel)を代謝消失結果から算出する。LC-MS/MSでとランズウェルの肝臓側と 胎盤細胞培地中の添加物と代謝物量の定量結果から、胎盤代謝能(CLplacenta, int)を推定する。培地中濃度から推定される化合物量をもとに肝細胞と胎盤細胞それぞれに対する毒性をLDH酵素活性測定で評価する。得られたパラメータをもとに母体が摂取した化合物が胎盤を通過して胎児に影響する可能性を生理学的薬物動態モデルから生体内濃度を用いて検証していく。
昨年度発表予定していた学会が、感染症蔓延防止のためにいずれも中止またはWeb開催となり、出張費として計上してい予算の一部が残り、今年度分として実験用予算として計上した
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 3件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 5件)
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