研究課題
ヒト胎盤由来BeWo細胞を用いた、薬物の代謝活性と誘導作用について、昨年検討を行った結果、従来の肝臓で認められる誘導作用のうち特にCYP1A誘導効果が顕著に認められた。CYP1Aの誘導については、Ahレセプターを介した誘導機構が報告されていることから、BeWo細胞内のAhレセプターとCYP1A酵素誘導について、mRNAレベルを定量して検討した。CYP1A誘導剤として汎用されるオメプラゾールとβ~ナフトルラボンを培地中に添加し、エトキシレゾルフィンO-脱エチル化活性を測定した結果、β~ナフトフラボンの方で有意な活性の上昇が認められた。この誘導作用に関してAhレセプターには変化がみとめられなかったことから、BeWoには異なるCYP1A誘導機構が存在することが示唆された。母体が摂取した化合物は胎盤にどのような作用を示すのかについて、Transvellを用い、ヒト肝細胞とBeWoの共培養系での影響を検討した。Transwell側にHepaRG細胞を培養し、サーバー側にBeWoを培養してTransfell側に化合物を添加したものと、BeWo単独で培養した場合では、肝細胞との共培養系でのみCYP1A活性の誘導が認められた。以上の結果から、肝細胞で化合物が代謝されること、細胞内に化合物が蓄積することでBeWoへの影響が減弱する可能性が示唆された。実際に各化合物の膜透過性について、Caco-2, BeWo , ラット小腸細胞IEC-18とサル血液脳関門培養細胞で比較した結果から、BeWoの透過性は概ねCaCo-2細胞と類似している傾向が認められた。また、膜透過性には、化合物側の特徴として母核のケトン基の有無が影響している可能性が強く示唆された。
2: おおむね順調に進展している
年度同様に、感染症について緊急事態宣言が継続され、連続必要な研究が思うように進まないこともあったが、当初の研究計画の範囲は達成したと考えている。
各種細胞での膜透過の特徴が把握できたことから、細胞間での膜透過性の違いと被験化合物の構造の関連性について、さらに詳細に検討を行う事を考えている。候補化合物としては、レナリドマイド、ポマリドマイド及びサリドマイドとその類縁構造を有するフタルイミド系化合物などを代謝化合物として考えている。
研究結果の発表の場である学会の開催の多くがキャンセルまたは、Webでの開催となり、現地へ赴くための旅費が未使用となったため、次年度の学会での発表のために繰り越しとした。
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