研究課題/領域番号 |
20K07140
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
花輪 剛久 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (00302571)
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研究分担者 |
河野 弥生 東京理科大学, 薬学部薬学科, 講師 (50711660)
田口 光正 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 上席研究員(定常) (60343943)
廣木 章博 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員(定常) (10370462)
佐藤 光利 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (60231346)
飯嶋 哲也 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (70324209)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ハイドロゲル / 電子線照射 / 皮膚潰瘍 / 膨潤度 / 薬物放出 |
研究実績の概要 |
乳がんにおけるがん性皮膚潰瘍からの出血を止血する目的でモーズペーストが使用されているが、時間経過や体温により製剤の硬度が変化するため、硬度調節が困難であること、粘度が高く患部に塗布しにくいことが問題として挙げられている。一方、ハイドロゲルは潰瘍部分の形状に合わせて自在に変形可能であり、薬物を担持・放出することができる。そこで本研究では、電子線照射法を利用して塩化亜鉛(ZnCl2)含有ポリビニルアルコールハイドロゲルを調製、物性を評価し、乳がん皮膚潰瘍製剤への応用の可能性について評価した。 ポリビニルアルコール(EXCEVAL)濃度が10 w/v%、塩化亜鉛濃度が0、50または75 w/v%となるよう混合した溶液を、厚み1 mmとなるよう容器に充填した後、30 kGyまたは50 kGyの電子線を照射し、ハイドロゲルを調製した。得られた試料のゲル分率、膨潤度、引っ張り強度、薬物放出試験などについて評価した。 塩化亜鉛濃度の増加と共にゲル分率が低下する傾向が認められた。また、照射線量の増加に伴い、最大膨潤度が上昇する傾向が認められた。 EXCEVALハイドロゲルにおいて、照射線量の多いハイドロゲルで引張破断強度が増大した。これは、PVA鎖間の架橋が増加し、架橋が密となったことにより、結合の破壊に要する力が大きくなったためであると考えられる。 さらに、照射線量の増加に伴い、薬物放出率が向上した。照射線量が多いハイドロゲルで膨潤度が高い傾向が認められていることからも、照射線量が多い方がハイドロゲル内部に侵入する水分量が多く、その結果薬物の放出もされやすくなっているのではないかと考えられた。同照射線量のハイドロゲルにおいては、塩化亜鉛濃度が高いほど薬物放出率が上昇した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度初頭よりコロナ禍による研究室および共同研究先である量子研究所が閉鎖され、研究の開始が大幅に遅延した。申請者の施設は6月より研究室を一部開放し、入室人数制限をしながら研究を開始したが、測定施設の使用制限などもあり、計画どおりに進捗しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究を通して得られた結果から、塩化亜鉛を含有するハイドロゲルを電子線照射により調製可能であることが明らかになった。 2021年度に実施する研究としては 細孔を有するハイドロゲルを調製:電子線照射前に、水溶性高分子水溶液を、底部に多数の凸のある鋳型(mold)に流し込み、電子線照射して細孔を有するハイドロゲルを調製する。その後、このハイドロゲルを凍結乾燥し、片面に細孔を有する乾燥ゲル(キセロゲル)を調製し、その細孔中に可溶化を施した医薬品粉末を担持させることにより、医薬品含有乾燥ゲルが調製可能と考えた。乾燥ゲルは系内に水を含有しないため、浸出液の吸収能はハイドロゲルよりも極めて高いと予想される。また、表面には未架橋の高分子が存在するため、粘膜付着性も有すると考えられる。吸収した浸出液により形成されたハイドロゲル中を医薬品分子が拡散し、患部に放出されると予想する。 本研究ではPVA、HPMC、ゼラチン(GL)、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシメチルデンプン(CMS)など粘膜付着性を有する水溶性高分子を単独もしくはそれらを互いに混合し、電子線照射による架橋構造の形成を試みる。 乾燥ゲル製剤への医薬品の担持:乾燥ゲルに医薬品を導入する方法として、医薬品をナノ粒子化および可溶化剤を添加して粉末化し、乾燥ゲルの細孔内部に担持させる方法などが考えられる。乾燥ゲルの細孔構造、形状による医薬品の担持およびハイドロゲルとした際の放出特性についてフランツ型拡散セルによるin vitro試験、マウスおよびラットなどの動物を用いたin vivo実験により生体への薬剤移行性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度初頭よりコロナ禍による研究室および共同研究先である量子研究所が閉鎖され、研究の開始が大幅に遅延した。申請者の施設は6月より研究室を一部開放し、入室人数制限をしながら研究を開始したが、測定施設の使用制限などもあり、計画どおりに進捗しなかった。 次年度は繰越金を使用してハイドロゲルを成型するための鋳型(mold)を作製するとともに、キセロゲルを調製するための至適条件を検討する。
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