研究課題/領域番号 |
20K07140
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
花輪 剛久 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (00302571)
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研究分担者 |
河野 弥生 帝京平成大学, 薬学部薬学科, 准教授 (50711660)
田口 光正 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 上席研究員 (60343943)
廣木 章博 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員 (10370462)
佐藤 光利 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (60231346)
飯嶋 哲也 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (70324209)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ハイドロゲル / キセロゲル / がん性皮膚潰瘍 / 創傷治癒 |
研究実績の概要 |
2021年度はキセロゲルを調製する前段階として調製当初より医薬品を含有するハイドロゲルの調製方法について検討した。 本研究で調製するハイドロゲルはがん性皮膚潰瘍の治療を目的としているため、概念としては創傷治癒製剤の開発と同様である。 創傷は外的もしくは内的な要因による、皮下組織・粘膜などの開放性あるいは表在性損傷である。創傷治癒には創傷部の湿潤環境の維持に加え、抗菌・抗炎症作用、表皮細胞や線維芽細胞の増殖・移動促進作用を有する化合物の投与が有効とされている。植物由来の化合物であるクルクミン(CUR)は創傷治癒作用を有することが知られている。しかし、CURは酸性および中性領域の溶媒に難溶解性であるため、製剤化は困難であるとされている。また、創傷治癒用製剤には複雑な形状の創傷にも効率的に医薬品を到達させることができる物性が求められる。そこで本研究では、まずCURの可溶化を目的としてCURを界面活性剤[Kolliphor174; P 188(P188)]と混合粉砕してナノ粒子の調製を試みた。その結果、混合粉砕により試料中CUR結晶の非晶質化が認められた。次いで、得られたナノ粒子をアルギン酸カルシウムゲルに内包させたCUR含有ナノゲル製剤(CUR-NG)の調製を試みたところ、最小粒子径(346.1 ± 5.6 nm)のNGが得られた。これらの結果から、CUR含有NGが創傷治癒製剤へ応用可能であることが明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は界面活性作用を有する水溶性高分子であるPoloxamer188と難水溶性医薬品であるクルクミン(CUR)との混合粉砕によりCURを非晶質化することができたこと、また、ナノゲル(NG)を調製するための超音波の振動数、時間、その他成分の組成比を早期に決定することができたことなどが、本研究を順調に進捗させる原因になったものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は本研究課題の最終年度となるため、本研究課題で取り組むキセロゲル製剤の実用化に向けた研究を総合的に行う。 (1)CUR含有アルギン酸カルシウムナノゲル(NG)の物理化学的性質の検討:前年度の実験ではNGからのCURの放出挙動を明らかにすることはできなかった。そのため、本年度は透析膜を主に利用したNGからの医薬品の放出挙動の検討法を確立する。また、NGを実際に創部に投与する際の性状を考慮した際の懸濁液中のNGの分散安定性、スプレー剤とした時のノズルの通過性などについて検討する。 (2)In vitroでのCUR含有NG(CUR-NG)の創傷治癒効果の検討:ヒト表皮角化細胞(HaCaT細胞)およびヒト皮膚繊維芽細胞(NHDF細胞)を10%FBS含有DMEM培地で培養する。 CUR-NGによるHaCaT細胞、NHDF細胞の増殖能評価(WST-assay):96wellプレートに3000cells/wellで各細胞を播種し、1%FBS含有DMEM培地に対照群としてDMSO、10μM CUR/DMSO溶液、CURを2.5、5、10および20μM含有するCUR-NGを添加した際の24時間後の増殖能を評価する。 (3)動物実験によるCUR-NGの創傷治癒効果の検討:ヘアレスマウスを東京理科大学動物実験ガイドラインに従って飼育する。イソフルラン吸入麻酔下にあるヘアレスマウスの背部に直径6mmの生検トレパンを用いて左右2か所の創傷を作成する。創傷部の面積を画像解析ソフトImage Jにより経時的に観察し、その縮小率を算出し評価した。Day 0の面積を100%として、各日における創傷面積(%)を算出する。また、創傷面積から各日における創傷治癒率(%)を算出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による学内立ち入り制限のため、本研究課題に取り組む時間が相対的に減少したために、全額を執行することができず、次年度使用額が生じました。
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