研究課題/領域番号 |
20K07141
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
桧貝 孝慈 東邦大学, 薬学部, 教授 (70297711)
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研究分担者 |
永井 英成 東邦大学, 医学部, 臨床教授 (30349899)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分子標的薬 / 肝細胞がん / NK依存性細胞傷害 |
研究実績の概要 |
標的細胞モデルとして肝がん細胞株HepG2を使用して、ソラフェニブ(SF)、レゴラフェニブ(RF)、レンバチニブによる肝がん細胞のシアル酸転移酵素遺伝子(ST3Gal1-5)の変動をプロモーター活性を中心に解析した。なお、以前、我々はシアル酸転移酵素3(ST3Gal3)が、SFで発現量が上昇すること、ST3Gal3の上昇は、細胞表面のシアル酸量を増加させ、NK細胞による細胞傷害を増加させることをすでに見出している。その結果、ST3Gal5のプロモータ活性が、SFにより減少することを見出した。一方で、MEK阻害剤のPD98059やU0126では、ST3Gal5プロモータ活性が増加すること、MEKKの過剰発現により、ST3Gal5のプロモータ活性が減少することが明らかとなった。このことは、SFの主作用であるRafの阻害では説明がつかず、マルチキナーゼであるSFの他の作用を介していることを示唆するものである。現在、Raf非依存的なST3Gal5の減少を探索している。現在、HepG2細胞におけるST3Gal5の転写調節制御領域を見出し、その主要転写因子を解析している。 臨床的検討としては、NK細胞上の活性化受容体であるNKG2Dのタンパク質リガンドであるMICAの可溶性型(sMICA)の測定を、テセントリク+アバスチン治療前後の肝細胞がん患者11例に対して行った。現在、その結果と臨床上での治療効果やエチオロジー、Child-Pughスコアとの比較検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和2年度の研究実施計画である、1)分子標的薬による糖転移酵素遺伝子の発現変化の解析 2)分子標的薬による糖転移酵素遺伝子の発現調節メカニズムの解析 3)ソラフェニブの新規作用、4)進行性肝癌の病態と血清中NKリガンド量の比較解析および臨床的検討などについて、概ね順調に結果が得られているため
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、分子標的薬によるST3Gal5によるリモデリング制御機構を、阻害剤などを用いてルシフェラーゼ活性やウェスタンブロットを用い、細胞内シグナルや転写因子を中心に解析する。また、リモデリングされた細胞に対する傷害活性は、KHYG-1細胞をエフェクター細胞として利用し、LDH Cytotoxicity Detection Kitにより行う。 臨床的検討としては患者血清中可溶性MICAおよびPD-L1をELISA法により測定し、臨床データを集約的に解析した後、治療成績の変動と病態、血清中MICA濃度と患者背景、治療成績との関連性を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:納期予定日が延長して、やむなく4月に納品となり、2021年度の執行となったため。
使用計画:患者血清中可溶型PD-L1の測定
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