研究課題/領域番号 |
20K07142
|
研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
服部 喜之 星薬科大学, 薬学部, 教授 (90350222)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | siRNA / 葉酸 / リポソーム / がん細胞 |
研究実績の概要 |
昨年度までの研究成果において、0.5 mol%の葉酸PEG5000-DSPE(葉酸PEG)と2.5 mol%のPEG1600-コレステロール(PEG-Chol)で修飾したsiRNA/正電荷リポソーム複合体(リポプレックス)または0.5 mol%の葉酸PEGと2.5 mol%のPEG2000-コンドロイチン硫酸(PEG-CS)で修飾したリポプレックスが、がん細胞(扁平上皮がんKB細胞)で高発現している葉酸受容体を介して高い遺伝子発現抑制効果を誘導できることを明らかにしている。そこで今年度は、これら葉酸修飾リポプレックスを用いて、葉酸受容体を介したsiRNA導入によるがん細胞増殖抑制効果を、さらにマウス静脈内投与後の生体内分布を調べた。その結果、葉酸PEG/PEG-Chol修飾または葉酸PEG/PEG-CS修飾リポプレックスを用いてがん細胞の増殖に関わるpolo-like kinase 1 (PLK1) に対するsiRNAをKB細胞に投与したところ、葉酸未修飾リポプレックスと比較して高いがん細胞増殖抑制効果を誘導できた。さらに、蛍光標識siRNAを用いて調製したリポプレックスをマウス静脈内投与したところ、PEG未修飾リポプレックスでは肺に集積したものの、葉酸PEG/PEG-Chol修飾または葉酸PEG/PEG-CS修飾リポプレックスでは肺での集積量が著しく減少した。これは、葉酸修飾リポプレックスが静脈内投与後、PEG修飾により赤血球との凝集を抑制したため、肺への集積性が減少したものと考えられた。以上の結果から、調製した葉酸修飾リポプレックスは、葉酸受容体を介してsiRNAをがん細胞に導入することで高いがん細胞増殖抑制効果を誘導できること、また、リポプレックス静注後の血液成分との凝集性を抑制できることが判った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
調製した葉酸修飾リポプレックスは、がん細胞選択的にsiRNAによる遺伝子発現抑制効果を介してがん細胞増殖抑制効果を誘導できたこと、静注後、血液成分との凝集性を抑制し、血液中での安定性を改善できる可能性が見いだせたことから、予定通り次年度に担がんマウスを用いたがん治療の研究を行うことができる。コロナ感染予防による大学での研究活動の制限などがあったものの、当初の研究計画に示した実験内容で順調に研究が進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
血液中での安定性を改善でき、がん細胞選択的にsiRNAを導入できる葉酸修飾リポソームを用いて、KB細胞を皮下移植した担がんマウスに静脈内投与する。蛍光標識siRNAを用いて調製したリポプレックスにおいては、ex vivo imagingを用いて担がんマウスの腫瘍におけるsiRNA集積性を調べる。また、PLK1 siRNAを用いて調製したリポプレックスにおいては、静注後、継時的に担がんマウスの腫瘍サイズを測定することで、抗腫瘍効果を調べる。
|