昨年度までの研究成果において、0.5 mol%の葉酸PEG5000-DSPE(葉酸PEG)と2.5 mol%のPEG1600-コレステロール(PEG-Chol)で修飾したsiRNA/正電荷リポソーム複合体(葉酸PEG/PEG-Chol修飾リポプレックス)または0.5 mol%の葉酸PEGと2.5 mol%のPEG2000-コンドロイチン硫酸(PEG-CS)で修飾した葉酸PEG/PEG-CS修飾リポプレックスは、静脈内投与後、赤血球との凝集を抑制し、肺での集積性を減弱できることを明らかにした。そこで、葉酸PEG/PEG-Chol修飾または葉酸PEG/PEG-CS修飾リポプレックスを、葉酸受容体が過剰発現しているがん細胞(扁平上皮がんKB細胞)を皮下移植した担がんマウスにそれぞれ静脈内投与し、がん組織へのsiRNA集積性を評価した。その結果、どちらのリポプレックスにおいても、がん組織に高いsiRNA集積性を示すことが判った、そこで、がん細胞の増殖に関わるpolo-like kinase 1 (PLK1) に対するsiRNAを用いて葉酸修飾リポプレックスを調製し、静脈内投与後のKB担がんマウスに対する抗腫瘍効果を調べた。その結果、葉酸PEG/PEG-CS修飾リポプレックスにおいて、がん増殖抑制効果が観察された。以上の結果より、葉酸PEG/PEG-CS修飾リポプレックスは、siRNAの活性を保持したまま、静脈内投与後の血液中での安定性を改善し、がん組織に集積後、葉酸受容体を介してがん細胞に取り込まれ、抗腫瘍効果を誘導できることが考えられた。葉酸修飾siRNAリポプレックスが、がんの治療に有効である可能性が明らかとなった。
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