研究課題/領域番号 |
20K07144
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
永井 純也 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (20301301)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 腎近位尿細管上皮細胞 / アルブミン / アラキドン酸カスケード / シクロオキシゲナーゼ阻害剤 / HIF-1 |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)や薬剤投与による糸球体ろ過バリア機能の低下は、通常では糸球体ろ過の制限を受けているアルブミンが尿細管管腔中へと漏出するようになる。こうしたアルブミンの漏出自体が腎線維化、ひいては腎不全につながる要因となることが示唆されているが、その分子機構は不明である。我々はこれまでにアルブミンに結合している脂肪酸が転写因子HIF-1を活性化させること、その脂肪酸としてアラキドン酸が有力であること、アルブミン処理はPGE2生成を高めることなどを見い出してきた。そこで、本研究では尿細管管腔中へのアルブミン漏出に伴う腎線維化の発症過程におけるアラキドン酸カスケードとHIF-1活性化の関連性について明らかにすることを目的とする。まず、本研究課題の初年度においては、ヒト腎近位尿細管上皮細胞由来HK-2細胞を用いて、ヒト血清アルブミン曝露に伴うPGE2産生の経時変化を調べるとともに、そのPGE2産生に及ぼすシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤の影響について検討を行った。その結果、脂肪酸結合型(通常型)ヒト血清アルブミンにより処理時間依存的にPGE2産生が増加し、ある種のCOX阻害剤の併用によりPGE2産生は顕著ではないものの有意に減少することを認めた。また、脂肪酸結合型アルブミン処理したHK-2細胞におけるCOX のmRNA発現変動について解析した結果、COX-1 mRNA発現の変化は見られなかったが、COX-2 mRNA発現は対照群に比べ上昇する傾向が見られることを観察した。以上より、アルブミン曝露により腎近位尿細管上皮細胞においてPGE2が生成するとともに、その生成には少なくとも一部COXが関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度の成果は、学会発表も行っており、一定の成果は得られていることから、上記の判断とした。
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今後の研究の推進方策 |
In vitroで見いだされた知見がin vivoにおいても観察されるかどうかの検証を進める予定である。具体的には、尿細管管腔中へのアルブミン漏出に伴う尿細管PGE2およびPGE-M生成促進が起きているかどうかを調べるため、アドリアマシン誘発アルブミン尿発症マウスを用いて解析を行う。さらに、COX阻害剤投与による腎線維化への影響についての検討も予定している。
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