研究課題
本研究はBCR-ABL1に点変異を認めないBCR-ABL1阻害薬耐性慢性骨髄腫細胞における耐性獲得機序の解明とその機序を阻害する分子標的薬を見出すことを目的としている。令和2年度では、イマチニブ耐性細胞、ダサチニブ耐性細胞及びポナチニブ耐性細胞を樹立し、これら耐性細胞におけるBCR-ABL1阻害薬耐性獲得機序について解析を行った。マイクロアレイ等を用いて遺伝子発現の解析を起こったところ、数種のがん発生に関わる遺伝子の発現増加及び慢性骨髄性白血病以外のがん種での分子標的薬耐性に関わる因子の発現増加が認められた。また、これら因子のsiRNAをBCR-ABL1阻害薬と併用することで、BCR-ABL1阻害薬耐性を克服できることも見出している。さらに、出した数種類の因子は薬剤排泄トランスポーターの発現調節に関わっていることが知られているため、発現解析を行ったところ変化は認められなかった。以上のことから、マイクロアレイ等の遺伝子発現解析で見出した因子がBCR-ABL1阻害薬耐性に重要であり、これら因子の阻害がBCR-ABL1阻害薬耐性克服に重要であることが示唆された。今後は、同定した因子に関わる全シグナル伝達経路活性化機構の解析するとともに、活性化が認められたシグナル伝達経路阻害薬(分子標的薬)を用いてBCR-ABL1阻害薬耐性が克服できるか検討を進めていく予定である。さらに、BCR-ABL1阻害薬耐性克服が認められた分子標的薬については、in vivoにてBCR-ABL1阻害薬耐性細胞の腫瘍増殖が抑制できるかについても検討を進めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
令和2年度においてイマチニブ耐性細胞、ダサチニブ耐性細胞及びポナチニブ耐性細胞を樹立し、マイクロアレイ等を用いてBCR-ABL1阻害薬耐性機序の解析を行い、数種類の因子が耐性に関わっている可能性を見出している。また、これら因子のsiRNAによるノックダウンにより、BCR-ABL1阻害薬耐性を克服できることも明らかにしている。さらに、見出した数種類の因子は薬剤排泄トランスポーターの発現調節に関わっていることが知られているため、発現解析を行ったところ変化は認められなかった。現在は、見出した耐性に関与する因子の全シグナル伝達経路活性化機構を解析している。
令和3年度は樹立したイマチニブ耐性細胞、ダサチニブ耐性細胞及びポナチニブ耐性細胞の耐性機構、特に全シグナル伝達経路活性化機構の解析を進めていく。具体的には、同定したBCR-ABL1阻害薬耐性因子に関するシグナル伝達経路を網羅的に解析し、主要なシグナル伝達経路を同定する。また、同定したシグナル伝達経路の阻害薬(分子標的薬)を用い、BCR-ABL1阻害薬耐性が克服されるか検討を進めるととに、正常細胞に影響を及ぼさない最適な組み合わせを見出す。さらに、見出したBCR-ABL1阻害薬と分子標的薬の併用により、in vivoにおいて耐性が克服できるか検討を進めていく予定である。
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