研究課題/領域番号 |
20K07146
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
古賀 允久 福岡大学, 薬学部, 准教授 (60570801)
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研究分担者 |
山内 淳史 福岡大学, 薬学部, 教授 (90341453)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ナルメフェン / 心血管イベント |
研究実績の概要 |
飲酒量低減薬ナルメフェンは、新しいアルコール依存症治療薬である。アルコール依存症患者に対する「断酒」の治療はハードルが高く、断酒の成功率が低い。そのため、「飲酒量低減」とすることで、患者は治療のハードルが下がり、治療を受け入れやすく、断酒の橋渡しとしても減酒が有効である。その「減酒」のニーズにあった飲酒量低減薬ナルメフェンによる治療が期待されている。しかし、ナルメフェンの添付文書には動脈硬化症の発症・進展の主因である血中トリグリセリド増加、高脂血症などの副作用が記載されている。そこで、「ナルメフェンは、動脈硬化症を発症・進展させる。」という有害作用の仮説を検証する。すなわち動脈硬化症モデルマウスであるapolipoprotein E knockout (ApoE KO)マウスにナルメフェンを1mg及び3mg/kg/dayで21日間投与し、動脈硬化巣を評価した。ナルメフェンは、濃度依存的に全大動脈における動脈硬化巣の形成を促進させた。また、大動脈起始部においても動脈硬化巣の形成を優位に促進させた。さらに、全体動脈における結合組織増殖因子であるCTGF(connective tissue growth factor)の発現を有意に増加させることが、ウエスタンブロット法で明らかとなった。さらに、免疫組織染色によりそのCTGFの発現は動脈硬化巣内(血管中膜)及び血管外膜で観察された。したがって、ナルメフェンはCTGFの発現を増加させることにより、動脈硬化巣の形成を促進させることが示唆された。またCTGFが動脈硬化巣内(血管中膜)及び血管外膜で発現していたことから、それらを構成する細胞としてマクロファージ及び血管平滑筋細胞のおけるナルメフェンの作用を明らかにするために、予備実験に取り組み始めたところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、主に動脈硬化症モデルマウスを使用した動物実験により、ナルメフェンが動脈硬化巣の形成を促進することを明らかにした。その要因の一つとして、CTGF発現の増加によるものであると考えられる。このように、ナルメフェンによる動脈硬化巣の形成を促進させることを動物実験により明らかにしている。また、マクロファージ及び血管平滑筋細胞におけるナルメフェンの効果を明らかにするために、細胞実験の予備実験に取り組み始めている。したがって、概ね順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、ナルメフェンがCTGF発現を増加させ、動脈硬化症を増悪させることが動物実験で示唆された。そのCTGFは動脈硬化巣内(血管中膜)及び血管外膜で発現が増加していることも明らかにした。 今後、動脈硬化巣内に集積しているマクロファージや、中膜を構成している血管平滑筋細胞におけるナルメフェンの効果を明らかにしていく。具体的には、動脈硬化症の研究で多用される培養マクロファージ細胞(RAW264.7細胞)及びラットから単離した大動脈血管平滑筋細胞に、ナルメフェンを処理し、CTGF発現の機序を明らかにしていく。また、CTGF以外の炎症性サイトカイン等の発現についても、動物実験と並行し、細胞実験によって検討したいきたい。
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