研究課題
妊娠中に母体に投与された薬剤は胎児毒性を生じる要因となりうるため、妊婦への薬物投与は慎重になる必要がある。一方で、妊娠期間中に薬物療法が必要となるケースも少なくないため、胎児の安全性と妊婦のQOL向上の双方の面から医薬品の胎児移行性に関する情報のいっそうの整備が望まれる。ポジトロン断層撮影法(PETイメージング)は低侵襲ながら高い定量性で生体内の薬物濃度を測定できるため、薬物の胎児移行性を知るための手法として有用なツールになることが期待されている。本研究では、ラットを用いてPETイメージングによりin vivoで薬物の胎児移行性を直接測定することで、将来的な臨床応用に向けた胎盤輸送評価系の基盤技術の構築を目指した。母体と胎児の間での物質輸送は胎盤に発現する薬物トランスポーターによって制御されていることから、胎盤で発現する主要な排出系トランスポーターであるBcrpとP-gpに注目し、それらの選択的PETプローブである[18F]pitavastatin(PTV)と[11C]verapamil(VRP)の動態を測定した。胎齢16.5日および12.5日の妊娠ラットを用いて[18F]PTV のPETイメージングを行ったところ、胎児中の薬物濃度の最大値は胎齢16.5日のほうで胎齢12.5日の2.5倍高い値となった。Bcrpの発現との関連性を検証するためウェスタンブロットや免疫組織化学による測定系を構築したところである。また、Bcrp阻害薬で処理することで、胎児からのプローブ排出の若干の遅延および胎児・胎盤中のプローブ集積量の増加が認められた。最終年度では、Bcrpと並び主要な排出系トランスポーターであるP-gpの基質となる[11C]VRPについて胎齢16.5日でPETイメージングを行い、[18F]PTVに比べて有意に胎児からの排出が遅く、胎盤中の集積量が多いことを明らかにした。
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