研究実績の概要 |
胎盤は、物質輸送、ホルモン分泌、分化能等の多彩な機能を有しており、胎児の発育・妊娠の維持に関与する。これらの機能には、胎盤におけるtrophoblast細胞が重要な役割を担う。Benzodiazepine (BZ) 受容体作動薬は、広く使用されている抗不安・睡眠薬である。また、近年、メラトニン受容体作動薬やオレキシン受容体拮抗薬等の睡眠薬も承認された。しかし、これら薬剤の妊娠期の安全性に関するデータは十分ではない。本研究は、抗不安・睡眠薬の移行性ならびに寄与因子を明らかにするとともに、trophoblast機能への影響についても多面的に評価することを目的とする。研究計画として、I. 胎盤移行性の違いと規定因子の解析、Ⅱ. 物質輸送能に及ぼす影響の評価、Ⅲ. ホルモン分泌能・分化能に及ぼす影響の評価を行う。本年度は、Iの課題についてin vitroにおける検討を進めた。 16種類のBZ受容体作動薬 (alprazolam, bromazepam, brotizolam, clobazam, clonazepam, clotiazepam, diazepam, estazolam, eszopiclone, ethyl loflazepate代謝物, etizolam, flunitrazepam, lorazepam, nitrazepam, triazolam, zolpidem)、メラトニン受容体作動薬 (ramelteon)、オレキシン受容体拮抗薬 (suvorexant, lemborexant) についてLC/MS/MSによる定量法を構築し、ヒト胎盤細胞株 (BeWo細胞) における蓄積量評価への適応を確認した。現在、細胞内蓄積量と各種物性との関連性について解析を進めている。また、suvorexantに関しては、37℃における蓄積量が4℃に比較して高いことが示された。
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