研究実績の概要 |
胎盤は、物質輸送、ホルモン分泌、分化能等の多彩な機能を有しており、胎児の発育・妊娠の維持に関与する。これら機能には、胎盤におけるtrophoblast細胞が重要な役割を担う。本研究は、抗不安・睡眠薬の移行性を明らかにするとともに、trophoblast機能への影響について多面的に評価することを目的とする。研究計画として、I 胎盤移行性の違いと規定因子の解析、Ⅱ 物質輸送能に及ぼす影響の評価、Ⅲ ホルモン分泌能・分化能に及ぼす影響の評価を行う。昨年度は、これら計画の評価系の構築を行い、本年度は、I・Ⅲの課題について検討を進めた。 ヒト胎盤細胞株 (BeWo細胞) におけるBenzodiazepine (BZ) 受容体作動薬の取り込み量は、lorazepam, ethyl loflazepate代謝物,clotiazepam, clonazepam, ethyl loflazepate, diazepam, nitrazepam, zolpidem, eszopiclone, triazolam, brotizolam, etizolam, estazolam, alprazolam, flunitrazepam, clobazamの順となり、薬剤により膜透過性は異なることが示唆された。また、新規のオレキシン受容体拮抗薬lemborexantについて、LC/MS/MSによる定量法の構築も行った。 また、ホルモン分泌能・分化能に対する影響を評価した。分化誘導試薬であるForskolinにより、各種分化マーカーやホルモン (Syncytin-1, 2, Connexin-43, hPL, β-hCG) の発現量の変化が確認された。BZのうちclobazamは、これら分化マーカー・ホルモンに対して影響を及ぼさないことが示された。その他の薬剤についても同様の検討を進めている。
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