研究実績の概要 |
胎盤は、物質輸送、ホルモン分泌、分化能等の多彩な機能を有しており、胎児の発育・妊娠の維持に関与する。これら機能には、胎盤におけるtrophoblast細胞が重要な役割を担う。本研究は、抗不安・睡眠薬の移行性を明らかにするとともに、trophoblast機能への影響について評価することを目的とする。 本課題では、「I. 胎盤移行性の違いと規定因子の解析」、「II. 物質輸送能に及ぼす影響の評価」、「III. ホルモン分泌能・分化能に及ぼす影響の評価」について計画している。 前年度は、ヒト胎盤絨毛癌由来細胞株 (BeWo細胞) を用いて、特にBenzodiazepine (BZ) 受容体作動薬に着目し、IおよびIIIの課題について検討を進めてきた。BeWo細胞は癌細胞由来であるため、本年度は、正常細胞における評価として、近年樹立が報告されたヒト胎盤幹細胞を用いた検討を進めた。既報に基づいた培養条件において、syncytiotrophoblastへの分化をマーカー (ERVW-1, ERVFRD-1, GJA1, CGB, CSH, SLC1A5, MFSD2A, ABCC4) の発現変動により確認した。また、ヒト満期胎盤、BeWo細胞、および幹細胞由来syncytiotrophoblastにおける各分化マーカーの発現比較も実施した。さらに、本細胞を用いて、薬剤による各種分化マーカーの発現変動に関する評価を行った。
|