研究課題
経肺投与可能なナノ微粒子製剤のプロトタイプの改良と基礎的評価を行った。様々なカチオン性高分子、アニオン性高分子のスクリーニングを行い、プラスミドDNA(pDNA)と自己組織化させることで、肺胞マクロファージに高効率に取り込まれる経肺投与可能なナノ微粒子製剤の開発に成功した。製剤の粒子径と表面電荷を測定した結果、粒子径100nm未満で表面がアニオン性の微粒子を形成していることが明らかとなった。GFPをコードしたpDNAを用いてナノ微粒子製剤を作製し、マウスに経肺投与した結果、肺で選択的に高い遺伝子発現を示した。さらに、組織透明化法を用いて経肺投与後の詳細な組織分布を検討した結果、肺の中でも肺胞マクロファージや肺胞上皮Ⅱ型細胞が豊富な部位に分布していることが確認された。そこで、この製剤をメラノーマワクチンへ応用した。メラノーマに対するDNAワクチンとしてpUb-Mを用いてナノ微粒子製剤を作製した。この製剤をマウスに2週間間隔で3回経肺投与し、最終投与から2週間後にマウスメラノーマ細胞株B16-F10を尾静脈内投与した。その結果、5%糖液を投与したコントロールおよびnakedのpUb-Mを投与したマウスでは肺転移が増殖したのに対し、pUb-Mを内包したナノ微粒子製剤を投与したマウスでは肺転移が有意に抑制された。また、免疫賦活効果を評価するために炎症性サイトカインを測定した結果、pUb-Mを内包したナノ微粒子製剤を投与したマウスでTNF-α、IFN-γ、IL-6が有意に上昇していた。以上のように、我々は本年度の研究によって、経肺投与可能なナノ微粒子製剤のプロトタイプの改良に成功した。さらに、メラノーマワクチンへ応用した結果、高い有効性を示した。来年度はsmall interfering RNA (siRNA)への応用を試みる予定である。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた研究計画をほぼ達成できているため、おおむね順調に進展していると評価した。
令和3年度においても当初予定していた研究計画に従い、研究を推進する。具体的には、ナノ微粒子の改良をおこない、siRNAへの応用を可能にする。siRNAを内包したナノ微粒子を調製し、製剤学的検討を行い、製剤の最適化を図る。その製剤を用いて、担癌マウスにおける有効性を評価する。
キャンペーン期間中に試薬の購入を行うなどして、効率的に研究費を使用し、COVID-19の影響により学会がWeb開催となったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、次年度実施するsiRNAの薬理効果の実験において、複数種類のsiRNAが必要になるため、そのsiRNAの購入に補填する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 3件)
Pharmaceutics
巻: 13 ページ: 126
10.3390/pharmaceutics13010126
巻: 12 ページ: 540
10.3390/pharmaceutics12060540