研究課題
本研究では、HER2陽性乳がんの治療薬であるpertuzumabおよびCD20陽性の非ホジキンリンパ腫の治療薬であるrituximab等を選択的に認識する抗イディオタイプDNAアプタマーを開発し、獲得したアプタマーの評価と血中薬物濃度測定に向けた検討を行った。また、獲得したアプタマーのKd値はnMレベルであり,抗イディオタイプ抗体以上の親和性は示さなかったものの、高い結合親和性と,血中IgGから選択的に対象物質のみを捕捉できる特異性を有していた。本研究において構築する抗体医薬の正確かつ頑健性の高い血中薬物濃度分析法は、TDM、PK/PD解析、バイオシミラー開発時の生物学的同等性評価など様々な用途が考えられ、個別化薬物療法への貢献も期待される。また、抗体医薬の実臨床での体内動態に関する情報は少なく、本研究では体内動態と治療効果・副作用との関連を明らかにすることを目的として、ニボルマブが投与された患者を対象とし、定常状態における血漿中濃度を測定した。治療効果は腫瘍増大の有無を調査し、副作用は免疫関連有害事象(irAE)発現の有無を調査した。腫瘍増大、irAE発現について血漿中濃度を比較したところ、いずれにおいても統計学的な有意差は認められなかったが、腫瘍増大の無い患者群では腫瘍増大が有った患者群と比較して平均血漿中濃度が1.76倍高かった。また、投与レジメンの違いによる定常状態における血漿中濃度に差は認められなかった。irAE発現に及ぼす血漿中濃度の影響は少なく、投与レジメン毎の血漿中濃度は同程度であることが示された。従って、いずれのレジメンも有効性・安全性の点で同等なものとして患者背景を考慮した選択ができると考えられる。また、血漿中濃度を精密にコントロールすることで、さらなる生存期間の延長が期待できる可能性も考えられた。
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Chromatography
巻: 43 ページ: 73-77
10.15583/jpchrom.2022.008