研究課題/領域番号 |
20K07158
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
尾上 誠良 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (00457912)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光線過敏症 / 安全性 |
研究実績の概要 |
光線過敏症は特定の物質の摂取後に露光することによって誘起される皮膚あるいは眼の異常反応であり,多くの医薬品・化粧品・食品においてその毒性反応が認められる.研究代表者は独創的な着想によって光反応性評価ツールとして reactive oxygen species (ROS) assay を開発し,既に本評価系は ICH S10 ガイドラインに本邦初の ICH 推奨安全性試験法として採用され(2014 年),また 2019 年には OECD test guideline 495 “Ros (Reactive Oxygen Species) Assay for Photoreactivity” として成立した.本研究は ROS assay データを基盤とする医薬品の物性と皮膚内動態を中心とする生物薬剤学的情報に着目して光毒性物質の特性を解析するとともに,得られる知見を基盤とした新規評価系構築を戦略的に進めるものである.現在の ROS assay は高い陽性検出率が評価されて ICH S10 や OECD ガイドライン等に採用されたが,難溶性化合物への適用性はまだ完全には解決出来ていない.そこで,シクロデキストリンや PEG 等の可溶化剤,ミセル形成試薬,あるいは複数のリン脂質から構成されるリポソームを添加することで細胞膜模倣環境を作り出し,さらには化合物の溶解性を高めることを目的とした新しい ROS assay システムを構築した.既に開発済みの ROS assay との相違を明確にし,特に感度,信頼性,日内・日間変動についても比較することで改良型 ROS assay の優位性を検証した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
約 70 種類の難溶性医薬品や医薬部外品に適用し,その予測精度,頑健性と適用限界について詳細に検証を進めた.医薬部外品のなかにはエキスやポリマー等の分子量不明素材を含めて,分子量が不明な状況でも ROS assay を可能にするために暫定分子量を定義するなど条件設定を試みた.さらに既に開発済みの ROS assay との相違を明確にし,特に感度,信頼性,日内・日間変動についても比較することで改良型 ROS assay の優位性を検証した.
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今後の研究の推進方策 |
光毒性の発現部位は皮膚であり,すなわち投与した化合物の皮膚移行性評価は極めて重要であろう.しかし皮膚移行性評価は数多くの実験動物と時間を要するため,生産性の高いカセットドージング法の導入を検討する.応募者らがこれまでに構築してきた薬物動態技術を駆使し,ラットにおける被験物質の体内動態を UPLC/ESI-MS を用いて精査する.カセットドージングにおいて懸念される動態学上の相互作用の発現有無の確認や,それによる毒性予測への影響についても精査する.
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次年度使用額が生じた理由 |
モデル動物の作成にやや遅延があったため 2021 年度に当該費用を移行した.
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