光線過敏症は特定の物質の摂取後に露光することによって誘起される皮膚あるいは眼の異常反応であり,多くの医薬品・化粧品・食品においてその毒性反応が認められる.近年,オゾン層の破壊に伴って光線過敏症に注目が集まり,新規化合物開発における本毒性リスクの回避は重要な課題となっている.特に創薬段階での本副作用回避が強く望まれているが,その発症機序解明は不完全であり,光線過敏症に関する有用な in vitro 評価系は未だに乏しい.研究代表者は独創的な着想によって光反応性評価ツールとして reactive oxygen species (ROS) assay を開発し,既に本評価系は ICH S10 ガイドラインに本邦初の ICH 推奨安全性試験法として採用され(2014 年),また 2019 年には OECD test guideline 495 “Ros (Reactive Oxygen Species) Assay for Photoreactivity” として成立した.本研究では ROS assay データを基盤とする医薬品の物性と皮膚内動態を中心とする生物薬剤学的情報に着目して光毒性物質の特性を解析するとともに,得られる知見を基盤とした新規評価系構築を戦略的に進めた.本検討によって従来行われてきた光安全性保障を動物実験に依存しない形で実施できることを明らかにできた.また,本研究によって得られた成果をもとに Adverse Outcome Pathways (AOP) ならびに Integrated Approach to Testing and Assessment(IATA) を作成し,2024 年 4 月に OECD ガイドラインとして認められた.
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