研究課題/領域番号 |
20K07159
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
湯浅 博昭 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (20191471)
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研究分担者 |
保嶋 智也 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 講師 (50753555)
山城 貴弘 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 助教 (20826614)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | トランスポーター / ポリアミン / スペルミジン / スペルミン / プトレシン / 前立腺 |
研究実績の概要 |
細胞膜で働く新規ポリアミントランスポーターとして見出されたpolyamine transporter 1 (PAMT1)の分子機能解析において、一過性発現系COS-7細胞でのヒトPAMT1によるspermidine輸送に対する生体内因性ポリアミン類(spermine、putrescine、agmatine、cadaverine)の特異的阻害効果がみられ、それらがPAMT1の基質となっている可能性が示唆された。一方、カチオン性生理活性物質群(histamine、thiamine等)、カチオン性薬物群(cimetidine、diphenhydramine等)は阻害効果を示さず、PAMT1に対する親和性はないとみられた。以上の結果は、PAMT1がポリアミン類に対する特異性の高いトランスポーターであり、その細胞内取込の制御において生理的に重要な役割を有している可能性を示唆するものである。 また、LNCaP細胞(前立腺モデル細胞)において、ポリアミン取込誘導効果が知られているアンドロゲン類(testosterone、dihydrotestosterone)の影響を検討した結果、何れについても、PAMT1のmRNA発現及びspermidine取込を上昇させる傾向が認められた。引き続いての検証を要するが、PAMT1のポリアミントランスポーターとしての生理的役割を示唆する知見である。 他のポリアミントランスポーター等の探索にも平行して取組んだ。ポリアミントランスポーターを見出すことはできなかったが、腎尿細管上皮細胞で働くアニオントランスポーターとして知られるorganic anion transporter 10(OAT10)が核酸代謝等に関わる生理活性物質であるorotateに対する輸送活性を持つことが新たに見出され、その再吸収に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PAMT1の機能解析(分子レベル)を進展させることができ、PAMT1はポリアミン特異性の高いトランスポーターであることが示唆された。この点から、PAMT1はポリアミン類の細胞内取込の制御において生理的に重要な役割を有している可能性が考えられる。また、LNCaP細胞(前立腺モデル細胞)において、ポリアミン取込誘導効果が知られているアンドロゲン類によるPAMT1の誘導傾向が認められた。引き続いての検証を要するが、PAMT1のポリアミントランスポーターとしての生理的役割を示唆する知見である。 このような進捗状況から、全体として概ね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
PAMT1の機能解析(分子レベル)の領域では、当初計画に沿って、ポリアミン類を含む多様な物質群を対象とし、PAMT1によるspermidine輸送への影響の評価により、機能調節に働く物質(阻害物質等)の探索を継続する。基質である可能性が示唆されたポリアミン類(spermine等)について、PAMT1による輸送の評価による検証を行う。さらに、基質、阻害物質(非基質)、活性化物質のそれぞれに関して、構造-活性相関的観点から、PAMT1による認識の要件を探る。 各種細胞株におけるPAMT1発現の評価の領域では、引き続き、広くPAMT1発現細胞の検索を進める。 モデル細胞系でのPAMT1の機能及び生理的役割の解析の領域では、LNCaP細胞(前立腺モデル細胞)でのアンドロゲン類のPAMT1誘導効果の検証を進める。また、他の前立腺モデル細胞等でのアンドロゲン類のPAMT1誘導効果についても検討する。その上で、PAMT1介在性とみられるspermidine輸送活性が確認された細胞において、輸送様式、速度論的特性、遺伝子ノックダウンの効果(PAMT1発現とspermidine輸送の低減)等の観点からPAMT1機能の検証を行う。さらに、PAMT1機能が確認されたモデル細胞系で、PAMT1機能の抑制(阻害剤や遺伝子ノックダウンによる)で惹起される細胞増殖抑制に基づいてポリアミン供給経路としての生理的役割の検証等を行う。
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