研究実績の概要 |
創薬研究での薬物動態と毒性評価に資するヒト代替肝細胞(ヒト肝細胞様細胞)を創製するために、ヒト肝芽腫由来細胞株のHuh-7細胞またはヒト肝癌由来細胞株のHepG2細胞をDNAメチル基転移酵素(DMNT)害剤である5-アザシチジン(5-Aza)でエピゲノム化処理することにより、第I相反応酵素である7種類のシトクロムP450(CYP1A2, 2B6, 2C8, 2C9,2C19, 2D6, 3A)分子種および第II相反応酵素であるグルクロン酸転移酵素(UGT)と硫酸転移酵素(SULT)活性を高発現させるための最適培養条件について検討中し、明らかにした。 今年度は以下の4項目について検討した。① 5-Aza処理の最適濃度は、HepG2細胞では2.5 μMであり、Huh-7細胞では10 μMであったが、処理後の薬物代謝酵素活性の発現誘導効果を両細胞間で比較すると、Huh-7細胞の方が明らかに低く、またHepG2細胞で認められたCYP2B6とCYP2C8の発現誘導が全く認められなかった。② HepG2細胞の5-Aza暴露処理中のDMEM培地中グルコース濃度について検討したところ、高グルコース濃度よりも低グルコース濃度の培地の方がより高い薬物代謝酵素活性の発現が認められた。③ HepG2細胞の5-Aza暴露処理中のDMEM培地へのDMSO添加の効果を検討したところ、CYP3AとUGT酵素活性においてより高い発現が認められたが、他の薬物代謝酵素活性は低下する傾向が認められた。④ 5-aza処理HepG2細胞の薬物代謝酵素機能を維持するための培養培地について、従来のDMEMと市販の3種類のヒト肝細胞培養培地で比較検討したところ、各培地において各薬物代謝酵素ごとに活性の維持能力に多少の違いはあったが、コストパフォーマンスと全ての薬物代謝酵素活性を考慮すると、DMEM培地での培養が推奨される。
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